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プロローグ

 もし、この退屈な世界を飛び出し、異世界でかわいい魔法使いの弟子として過ごせるとしたらあなたはどうするだろうか?健全な男子諸君は「行くに決まっているだろう‼ 異世界ってだけで心躍るのに、さらに可愛い魔法使いの弟子になって一つ屋根の下で暮らせるんだろ? 行かない訳ないだろ‼」と鼻息荒く即答するだろう。

 それはいたって普通の反応だ。少し前の俺なら同じ反応をした。だって想像してみろよ。少しぶかぶかのローブに身を包んだかかわいい女の子の姿を。そんなかわいい魔法使いの弟子になって四六時中一緒にいられるんだぜ?そりゃあ魔法使いの弟子というのは大変なこともあるだろうが、そんなのかわいい女の子と一緒にいられるのなら乗り越えられるさ。


 そう思っていた時期が俺にもありました。


「うわぁぁぁぁ! 死ぬ! マジで死ぬ! 助けてくれぇぇぇ!」

 食人植物の蔓に捕まってしまい、泣きながら全力でそばにいる少女に助けを求める。

「ん~? どうしたの、優真。今忙しいから後にしてくれない? それより食人植物の根を早く持ってきてよ」

 少女はこちらを見向きもせずにそう答える。

「その食人植物に食われそうになってんだよ‼ 早く助けてくれ!」

「やれやれ……、しょうがないなぁ」

 少女はめんどくさそうに立ち上がり、

「燃え上がれ、リプカ‼」

 と少女が唱えると一瞬にして食人植物は燃え上がり倒れた。

「死ぬかと思った……」

「だらしないわねぇ。食人植物相手にこんなんじゃ弟子にした意味がないじゃない」

 少女はあきれ顔でそう言った。

「しょうがないだろ。元いた世界には食人植物なんて恐ろしい植物は無かったんだから」

 涙をふきながらそう言い返す。

「元の世界のことなんて知らないわよ。それより約束通り弟子にして魔法を教えてあげるのだからしっかり仕事をしてくれないと困るわ」

「……すいません」

 この世界に来た当時は多少の困難はあるだろうけどなんとかなるでしょ!と高を括っていたが甘かった。ファンタジー小説とかに出てくる魔法が存在するということは、当然ファンタジー小説に出てくるような食人植物やスライムのようなモンスターも存在する。そんな世界は特に能力もない、ただかわいい女の子が大好きでしょうがない少年が暮らしていくにはあまりにも過酷だ。

 そんな過酷な世界で生きていくために魔法を習得しようと思い魔法使いに弟子入りをした訳なのだが、弟子入りしてから食人植物に食べかけられたりウルフに追い回されたりと死と紙一重の毎日を送っている。師匠の魔法使いは少しぶかぶかのローブに身を包むかわいらしい女の子で、弟子入りした日はこの子可愛らしい女の子に毎日魔法を教えてもらえるならどんな困難でも乗り越えられる!と思っていたが、今では「いくら頑張ったって出来ないことはある。諦め時を見極めるのが大事なのさ」、と悟りを開きかけているざまだ。

 

 あの日、異世界でかわいい魔法使いの弟子になって素晴らしい日々を過ごさないか?なんて馬鹿げた話に乗らなければこんなことにはならなかったのに……。

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