勿論家具も規格外
遅くなって申し訳ないです。
「あ、あった」
ヨシュカは魔物素材の納品依頼の紙をボードから剥がし受付へと持っていった。グレイスはギルドに入ってすぐ抱っこされヨシュカの腕の中で興味津々といった感じにキョロキョロ周囲を見回している。
「これ、お願いします」
受付に依頼の紙とギルドカードを渡す。
「はい、お預かり致します。依頼の品も此方へどうぞ」
そう言ってカウンターの上を示す。ヨシュカは空間魔法から魔物の角を大量に取り出し、次々と並べていく。あまりの数に受付も一瞬動きを止めた。
「申し訳ございません。規定数を大幅に越えているため依頼人に連絡をさせていただきますので少々お待ち下さい。」
すぐに冷静さを取り戻した受付はてきぱきと仕事を再開させた。一方、周りの冒険者達もカウンターの上を見てざわざわしている。
「おいおい、あれって破壊の森の固有種のドラゴンのじゃねぇか?」
「は?んな訳ないn……マジかよ………」
ヨシュカはそんな周りを完全にスルーして、側の空いている席にグレイスと座った。グレイスはガヤガヤしている周囲が怖いのかヨシュカの膝の上で小さくなっている。
「ヨシュカ様、完了手続きが済みましたのでどうぞ」
しばらくしてヨシュカが呼ばれると、先程までの喧騒が嘘のようにギルド内が静かになった。しかし冒険者達の視線はヨシュカに釘付けである。それでも相変わらず周りを気にしないヨシュカはグレイスを抱え直しカウンターへと向かった。ヨシュカが受付と話し出すと漸く周囲に音が戻った。
「なぁ、ヨシュカって言ったらあれか、あの時々くるローブの男」
「多分な、あのちっこいやつのローブがいつものだと思う。まぁあんな素材持ってくるのなんてそうそういねぇよな」
「ヨシュカならあの素材も納得だな。つーかあんな顔してたのかよ。強くてイケメンとか……もはや俺の存在価値がわかんねぇよ……」
落ち込む冒険者に構わず報酬を受け取ったヨシュカはさっさとギルドを後にした。
その後、バターなどの食品類や生活雑貨などを買い終えると、二人は昼食をとった。と言っても道のわきにある屋台で軽く済ませた程度である。ヨシュカの作ったものの方が美味しいといったグレイスにヨシュカが喜び抱きしめたのはご愛嬌である。
昼食の後、二人は街を出た。入る時とは門番が違ったのが幸いだっただろう。門を出てしばらく進み人の姿がどこにも見えないことをしっかり確認したヨシュカは【転移】を使い、行きよりもかなり短時間で帰った。
家に着いたヨシュカは買った大量の食品類を保管庫(空間魔法・時魔法付きのため大容量の上腐らない)にしまい、グレイスの服はグレイスの部屋にあるクローゼットへと収納した。
初日こそ一緒に寝た二人だったが、次の日にはヨシュカがグレイス用に空き部屋を片付け使えるようにしたため別々に寝ている。
「さて、今日は色々揃えられたからね。ちょっと豪勢な夕飯にしようか」
そう言ってヨシュカはキッチンへと行き料理に取り掛かった。グレイスはお利口に今日ヨシュカに買って貰った絵本を読んでいる。文字の勉強も少しずつではあるが進めているのだ。
魔法の練習に勉強、規格外による英才教育は着々と進んでいた。すごいという自覚のない二人はいたって平然と、普通という道から離れていく。
読了ありがとうございます。