いざ買い物
「グレイス、これ運んでくれる?」
「ん、わかっ…た」
あれから1週間が経ち、グレイスの魔力コントロールはかなり上達した。現に今、ヨシュカが作った朝食を魔法で浮かべ次々と運んでいる。また、ヨシュカの栄養満点な食事と十分な睡眠、そして魔力コントロールの上達にともない全身にむらなく魔力が行き渡るようになったことにより、グレイスは一人で普通に歩ける程度まで回復した。
グレイスが二人分のトーストと牛乳、フルーツヨーグルトをテーブルに置いていると、ヨシュカが困り顔でキッチンからやって来た。
「にぃ、どうか…した?」
「あー、それがねぇ。バターがもう無くなったんだよ。うちは牛飼ってるんだけど、めんどくさくてバターは作って無いから市販のやつなんだ。この前少なくなってるなぁと思って買いに行くつもりだったんだけどすっかり忘れてて。ごめん。今日はただのトーストで我慢してね」
苦笑しながら椅子に座る。グレイスはその隣に座った。因みに、一人で座らせてもらえるようになったのは昨日からだ。
「にぃ、買い…物、行くの?」
「他にも無くなりそうなものがあるからね。今日の予定は街に行くことにしようかな。グレイスも一緒に来る?人がいっぱいいるから、嫌なら留守番しててもいいよ?この家から出さえしなければ安全だし」
「んーん、一緒…に、行く」
「ならご飯食べ終わったら準備しないとね」
そうして、二人は朝食を食べ始めた。
「ふぉー…色、変わった」
「んふふー、凄いでしょ。魔法を使えばこんなことも出来るんだよ」
街へ行くための準備としてまず行ったのが二人の瞳の色を変えることだった。ヨシュカの目が、魔法により違う色に変わっていくのを目の前で見ていたグレイスは、目をぱちくりしている。そのグレイスも綺麗な碧眼になっていた。
その後、持っていくものは全てヨシュカの空間魔法に突っ込み後は着替えるだけとなったとき、ふいにヨシュカが止まった。
「そういえば…、君の服、どうしよっか」
そう、グレイスの着ていく服が無かったのである。今までは家と時々誰もいない荒野くらいにしか行かなかったのでヨシュカが魔法で汚れを落とした捨てられた時の服のまま特に不便なく過ごしていた。だがしかし、街まで行くとなるとそうはいかない。汚れてはいないものの所々破れたりしている服の幼い少年とローブ姿の青年、周囲の目が痛いこと間違いなしだろう。
「んー、仕方ないから僕の上着だけ着てその上からローブを羽織って見えなくしようかな。僕はローブ無しで頑張ろう。そして、街に着いたら先に服屋で君の服を買おうか」
「にぃ、ローブ……借りて、ごめん…ね?」
「あぁ、気にしないで。ローブはまだ魔法が上手く使えない頃、うっかり変装の魔法が解けても大丈夫な用に着てただけだから。今はもうそんなことないはずだから来てなくてもいいんだけど何となく馴れでね」
グレイスの頭を撫でながらニッコリ笑い、上着とローブを着せていく。最後にローブのフードを被せれば……
「わぉ、これはこれで怪しいかもね。全く姿が見えないや」
短いローブであったためなんとか引きずらないでいるものの、体のほとんどは覆い隠されて見えなくなった。まぁ無いものは仕方ないと、二人は割り切り玄関を出た。
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