納得いかない
「にぃ、魔力の属…性って、どんな…のが、ある?」
昼食のために一度練習を中断し家に戻ると、グレイスがヨシュカに尋ねた。先程まで行っていた練習では一番イメージしやすいだろうからと水属性を使用していたが、ヨシュカがお手本として出した大量の魔力球には青以外のものもたくさんあった。
「んー、そうだねぇ。取り敢えず誰でも持ってる無属性と基本属性と呼ばれるものが火、水、風、土、雷、光、闇の7つで、他にも特殊属性ってのが無数にあるよ。有名どころだと空間とか重力、創造、破壊かなぁ?」
「みんな、たくさんの…属性を、持って…るの?」
「ん?」
ヨシュカはグレイスの質問に首を傾げた。ちょうど完成した昼食をもってグレイスの座っているテーブルに運び自身も座る。そして、グレイスを膝に乗せた。過保護だ。
過保護だとは露程も思っていないヨシュカは、先程感じた疑問について問いかけた。
「何でそう思うの?」
「だって、にぃが出し…た、魔力球、もっとたくさん…色が、あった」
ヨシュカはなるほどと頷いたあと、違うよと続けた。
「僕もよく知ってる訳じゃ無いけど、多分2.3個くらいだったと思うよ?それに特殊属性を持ってる人自体ほとんどいなかったはず」
「にぃ…は、すごい?」
「そうだよー?僕もまだ把握しきれてないくらいにはたくさんの属性を持ってるからねー。忌み子だからなのかな?そうなったら、君もたくさん持ってるかもね。ご飯食べ終わったら調べてみようか」
そう言って、グレイスに食べるよう促した。グレイスは朝食の時よりも若干早く食べ進めている。属性を調べるのが楽しみなようだ。
「ふぅ…」
ゴトリと音を立ててテーブルに置かれたそれは、先程ヨシュカが物置から取ってきた物だ。ただの綺麗な水晶にしか見えないそれは魔力量と属性を上限無しに測れる優れものであり、昔にヨシュカが創造し使ったあと物置に仕舞われたまま忘れていた物でもある。
グレイスはキラキラした目で水晶を見つめている。
「じゃあ早速だけど調べてみようか。水晶に手を当てて魔力を流してごらん?あ、あんまり大量に流さなくても大丈夫だからね」
「ん、」
グレイスがぺたりと手のひらをくっつけ魔力を流すと、水晶の中に目に痛い程カラフルな光が浮かび、ピピッという電子音を最後に光が消え数字が現れた。
「何で…音、鳴るの…?」
「僕にも分からないんだ」
製作者にすら分からなかったらしい。
気を取り直して水晶を覗く。浮かんでいた数字は88888888。
「おぉ~、八が八つ。末広がりで縁起がいいね。あ、でも魔力量はこれからも訓練次第でどんどん増えるよ。属性については僕と一緒でたくさんでいいかな?」
「ん!にぃと、一緒!にぃの、魔力…量は、どのくら…い?」
「僕?大分前に調べたときは2・3億くらいだった気がするけどよく覚えてないなぁ。この際だし僕も調べようかな」
そう言うとヨシュカは水晶に手を当てた。グレイスの時と同様にカラフルな光が浮かび、やはり電子音を響かせた後に数字が現れる。浮かんでいる数字は666666666。悪意に満ちている。
「何?この水晶ってゾロ目が好きなの?しかも6とか…。かなり増えてて喜ぶべきなんだろうけど……嬉しくないなぁ」
納得いかないという顔を満面に浮かべているヨシュカを、グレイスが心配そうに見上げている。それに気付いたヨシュカは眉間のシワをとり笑顔を浮かべるとグレイスを抱き上げた。
「にぃ、魔力…いっぱ、い…だったの、いや…だった?」
「いやいや、魔力がたくさんなのは嬉しいよ」
並んでいた数字が問題だったけど…という台詞は口に出さなかった。
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