いつも以上にデレた
今回は短めです。
「ねぇグレイス、学校に行ってみる気はないかい?」
突然の問い掛けに、グレイスはきょとんとしつつももぐもぐと口の中のステーキを咀嚼し飲み込んだ。そして、わずかに前へと傾けていた体を正面のヨシュカに向けて端的に。
「何で?」
ふいに先程まで今までになく真面目な顔をしていたヨシュカが顔をしかめたかと思うと、出てくる出てくる。愚痴のオンパレードだった。
「聞いてよグレイス!僕は別に君を学校へなんて行かせたくないんだよ?それなのにこの前街に行ったときあの男に見つかっちゃってたみたいでさぁー、しかもグレイスと一緒にいたから僕が学生の年齢の子といることまでバレちゃって………中略Ⅰ………魔法だって勉強だって基本くらいなら僕にも教えられると思うし、実際僕も学校はほとんど行かなかったけど生活には困ってないし………中略Ⅱ………なのにあいつってば義務だから通わせろっていうんだよ!?」
漸く口が止まったものの未だ不満たらたらな様子のヨシュカに、グレイスは驚きつつも"あいつ"って誰だろうと呑気に考えていた。ヨシュカの話ぶりからするとかなり親しい間柄のように思えるが、どうなのだろうか。
「兄、あいつって誰?」
「あぁ、あいつは僕の昔の知り合いっていうか腐れ縁みたいな奴で今は国立の魔法学園の理事長をやってるんだ。だからもし君が学校に行きたいならそこに編入って形になるよ。僕としては通わなくても構わないよ?全寮制だからほとんど会えなくなるし……。あいつがうるさくなるだろうけど、まぁ無視できるしね」
君次第だよ、とそう言って笑ったヨシュカにグレイスは考え込む。この森に捨てられてから今までまともに会話していた人などヨシュカしかいなかった自分が学校などへ行っても大丈夫なのか。しかし、それ以前にヨシュカと離れることなど考えたくもなかった。
「兄と一緒なら、通ってもいい」
「え?その言葉はかなり嬉しいんだけどできるかな……」
「無理なら行かない」
いつになく頑とした言い方にヨシュカはあいつに聞いてみると返事をした。その顔もまたいつになく緩んでいた。
読了ありがとうございました。