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一話

完全犯罪、その四文字が頭に浮かんだのは世界が終わりそうなほど真っ赤な夕陽が差し込んだ放課後の教室だった。


それはただの偶然だった。いつも大人しくて周りにどれだけいじられていても笑って済ませてしまう女の子が真っ青な顔で教室から走って出ていった。

彼女の名前は夢見叶。漫画みたいな名前と同様容姿も漫画のヒロインのように飛び抜けて綺麗な女の子だ。

彼女を見るとほかの女子は全員ジャガイモに見える、そんなことを言った男子もいたがあながち外れていないところが怖い。

でも表があれば裏もあるようにどんな長所にも短所はある。彼女の場合飛び抜けた容姿のせいで女子から散々な言葉をかけられてるところとか。

大丈夫かと声をかければよかったかな、なんて3秒ぐらい考えたのだけどそこまで彼女に興味がないことを思い出した。

僕はというとお弁当箱を教室に忘れてしまって取りに戻ってきたところだった。時間が時間なだけに部活も終わっていて学校に人気はない。

あの子も忘れものでもしたのだろうかと特に深くは考えず教室の扉を開いた。

「…あらら」

目の前に現れたのは頭から血を流して倒れている女の子。

同じクラスの、キツイ鷹のような顔をしていつも誰かで遊んでいるようなどこにでもいる女の子だった。

どうしようかと3秒ほど考えて、夢見叶と倒れている女の子を見比べる。うん、夢見叶の方が可愛い。

僕は倒れている女の子の方へ足を進めて生きているか確認する。

息はしてない、脈もない。南無阿弥陀仏。

周りを見渡すと血の付いた花瓶と、破れた教科書。

教科書の方には夢見叶と書いてあるのが読める。こっちの鷹女子の方はなんかもっとゴツゴツキラキラした名前だった。

ここまで揃うと多分夢野叶が狐女子にいじめられていてカッとなって殴ったら死んじゃった、という具合かな。憶測だけど。

うーん、あまりにも不憫だ夢野叶。狐女子はいつもやりすぎなぐらいだったので自業自得としかいいようがないので特に。


話は変わるが、可哀想という言葉は最高の罵りだと僕は考えている。

「あの子は可哀想だから」例えば身近な者が死んだ人に、大きなケガをした人に、周りの人間は可哀想と憐れむがそれは侮辱だ。

自分がその人間より上にいるとわかっているからこそ出る言葉。自分は幸せなんだからと思うために出る言葉。

可哀想な人間は底辺だ。不幸だ。欠陥品だ。

僕は可哀想なものが好きだ。僕自身も可哀想だから同じ程度の人間はみんな友達だと思ってる。

でも普段の生活の中では僕と同じ可哀想な人間はなかなかいない。みんな「可哀想だ」と囁く側の人間様だ。

だからというわけではないが僕は生まれてこの方ずっと友達なし。

そういうオーラでも発しているのだろうか。向こうから話しかけられたことなんてないし、僕から話しかけてもみんな早々と話を切り上げ去っていく。

そんなことが何回も繰り返されれば自分から話かける元気もなくなるのは仕様がないだろう。


夢野叶も今日までは僕とは違った。可哀想ではなかった。


しかし、もしこの事件がきっかけで僕と同類になったら、高校に入って2年目、僕はついにぼっちを卒業できるかもしれない。

便所飯じゃなくて普通に教室で弁当を食べれる?それはなかなかに魅力的ではないか。

どんなに可能性が低くても、やらずに後悔するよりやって後悔しようって先生も言っていた。

僕はただの生ごみとなった女の子を見下ろす。死んじゃったらもうそこで終わりなんだから生きている僕に活用されてくれ。


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