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あるいは、堕天使の憂鬱  作者: とんぺり
彷徨う少女と理不尽な悪意
7/84

7-

説明に見えない説明をする技術を早く身に着けたい

 孤児院の庭先で、両手を伸ばし、意識する。

 指先から金属に、そのまま銃身に変わっていく。

 肩まで届いて、分離。

 分かれた両腕はひとつにまとまり、宙に浮く。

「うーん……」

「どうしたの?」

 リッカが声を掛けてくる。

「やっぱりなんか、慣れないなって」

 私のこの機塊()のことを、「ふぁんねるだ!」といって喜んだのは指がナイフになっているケヴィンだったけか。

 固めのスライムに腕を突っ込んでいるような、そんな感じで。スライムに腕を突っ込んだことなんてないけれど。

「私たちとはまたちがうからね。機腕(アーマン)でしかも機銃(ガンナー)ならあそこのジョイさんがいるけど、そこに分離タイプはいってるからねー」

 そういってみた先には、ソラと一緒に黒髪の人がなにかをはなしあっている。

 ソラの仕事の相棒(パートナー)で、アルバイトなんだそうだけど、二人の顔つきとか身長差からみるとどうしてもカップルに見えなくも……

 くいくいっ

 と服のすそが引っ張られて振り向くと、額から角のような機塊を生やした女の子がいた。

 銀の髪に、ワンピースを着た彼女の名前はユニちゃん11歳。

 彼女の機塊は、他人の機塊や偽塊にある程度干渉できるのだそうで、私の訓練をよく手伝ってくれている。

 どうも話を聞いてると、リッカの『目』はあくまでも相手の情報がわかるというぐらいのもので、経験と推測で私を誘導していたようだ。

 対してユニちゃんの『角』の場合は、情報はともかく使い方がなんとなくわかるらしい。

 偽塊の性能表と説明書の違いってところなのかもしれない。

 そして、その補助のおかげもあって一人で展開と復元が何とかできるようになった。

 のはいいのだけれど。

 つい

 と、ユニちゃんが両手に乗せた木材を突き出してくる。

「はいはい……っと」

 この次のステップがうまくいかない。

 地面に置かれた木材に集中して、力をいれる。

 発砲。

 でも

「また削れ過ぎちゃった……ね」

 ユニちゃんがもつ、木でできた立方体と見比べてみると明らかにサイズが足りなかった。

 ぽんぽんと背中をたたいて慰めてくれる。

「カルラちゃんの機塊()は溜めて撃つタイプだからねー。そのうち調節もできるようになるよ」

 そういいながら、リッカも手元の木材をヤスリで削っていく。

「はい」

 そこにはきれいな木のボールができあがっていた。

「うう……ズルイ……」

「機塊の向き不向きもあるからねー」


 何をしているのかというと、まず手ごろな木材をお手本どおりの10センチの立方体に切り出す。

 そのあと、もうひとつのお手本どおり直径10センチの球体に切り出す。だけ。

 ただし、機塊しか使っちゃいけない。

 リッカのように感覚の拡大がされるタイプだと削るためにナイフやヤスリを使うけれども、『視た』ままに削ればいいので比較的すぐに終わるのだとか。

 どちらかというと私みたいに『武器』をもつ人向けの訓練なんだそうだ。

 木材を割らないようにすることで力の調節を、お手本どおりに作り上げることで細かい動かし方をできるようになる。らしい。

 孤児院の子達でも立方体が切り出せるようになるまで大体1、2週間かかるという話。

 ちなみに、立方体に限らず他の多面体を作る場合もあるけど、最後はやっぱり球体なんだそうだ。


「雪が降ってればみんなで雪合戦で思いっきり暴れられるんだけど……さすがにまだ時期がねー」

「あばれ……?」

「うん。沢山人呼んでね。みんな容赦なしに機塊全開でいくからすごいよ?ノーマルの子達も混ざるから、雪に対してしか使えないんだけどね。みんな工夫してくるから」

 いい訓練にはなるけど、まさしく戦場。と。

「雪球を切り落としたり壁をぶちぬいたり分身みたいなことして避けられたりね。たまたま魔法使いさんが参加したこともあったけど、あのときはホントすごかったよ。火の玉とか風の柱とか使ってきたんだけど、あとでみんなから集中砲火うけてた」

 その話を聞きながら、私はいちど腕を復元して新しい木材をとりだす。

「終わってからみんなで食べるトン汁がまたおいしいんだー」

「それは楽しそうだけど……」

 私がみることはできるのだろうか。というか参加できる……の?

「またこればいいんじゃないかな?」

「これるの、かな?」

「そのために、ソラに依頼したんでしょ?もし家に帰れなかったらいっそのことここに住んじゃえばいいんだし」

 仕事だって探せばいくらでもあるよー。とはいうけれど

「そっか……全部おわっても帰れなくなることもあるんだね」

 お父様もお母様も、偽塊に対してはともかく機塊への態度がわからない。家では、特に機塊に対する話題もなかったことだし。

 手紙、どうしよう。

「あー……ほら、そんなに考え込まなくても。結構何とかなるもんだよ。なんとか。ほら、ユニも大丈夫だっていってるし」

 確かに、ぎゅっと抱きしめてくるその姿はそういってるような気がする。

「ありがとう」

 頭をなでて、答えてあげた。

 この子のは、機塊が発現したときにかわりに言葉を失ったらしい。

 そして両親とはぐれ、能力を抑えきれないまま彷徨っているところをソラに拾われてここに着たとか。

 はじめのうちこそ周囲の偽塊を無意識に暴走暴発させていたというけれど、今となっては機塊を介して大まかな感情を伝えることができるようにまでなっている。

 他にもソラが拾ってきたって子が2~3人いるっていうけど……

 あれ、羽があるし、飛行者(フライトマン)は鳥って呼ばれることもあるらしいし、ソラって単純に機塊(光り物)が好きなだけなんじゃ

「とりあえず、機塊って感情で結構どうにかできるっぽいからそこまで無理に使おうとしなくてもいいよー」

「感情……」スポ根?

「それより、カルラちゃんの家ってどんなところなの?」

「えっと?」

「ほら、貴族の家なんてそんなに見ないし。学校でも『ごきげんよう』とかやるんでしょ?」

「家は……敷地はここと同じぐらいかな?中央区(セントラル)……ここら辺の言い方をすると貴族街の端っこのほう?の住宅街でそこまで敷地があったわけじゃないみたいだし」

 うちは中流貴族だし。

「おー?」

「あ、でも北の避暑地に別荘があって、夏はそこにいったり」

「別荘!?」

 一緒にユニちゃんが目を輝かせる。

「学園でごきげんようは一部の人しかしないような……」

 それも自分こそは上流階級であると威張ってるような子が。

「てかそんなことどこで聞いたの?」

「本でよんだ」

 なるほど

「変に孤児院(ここ)ってそういったものそろってるからね。たまに読み書き算数習いに来る人もいるよ」

 いわれてみれば、想像していたよりも文字が読める子がおおくて昨日も今朝もおどろいたけれど、まさかそれほどとは。

 感心した私の表情を読んだみたいで

「しきじりつ?ってのはアンダータウンにいる人達より高いかもよ?みんなここ(スラム)から抜け出せるように必死だし。なにより出資者(パトロン)がいるからねぇ」

 と、リッカはどこか困ったようにいう。

 その出資者(パトロン)になにか問題でもあるのかな?

「あ、こっちからもひとつ」

「なーに?」

「堕天使とか悪魔って、なに?」

「えーっと……」

「ほら、ソラが昨日帰るときにいってたじゃない」

「ああ……」

 言葉を捜すように

「このあたりの、生きている都市伝説……っていえばいいのかな?

 興味本位で関わったり近づいたりしようとすると、危険どころじゃない目にあうって話なの。

 あわせて、ヒャッハー俺TUEEEってやりすぎてると、誰かがやってきて結局……ってね。

 どこの誰だかわからないまま、いつしか死神、悪魔、堕天使の三つの名前が定着していたのよね」

 そのおかげもあってこのあたりにも中途半端な安全なができてるってわけ。

 そういって締めくくった。

 つまり、スラムの安全弁?

「さ、それよりまだ訓練続ける?」

 リッカが続きを促したとき

「おう、ちょっといいか?」

 ソラと、一緒に何かを話していた男の人が来た。


「えっと、ハジメマシテ。ジョイ・ブローバックと申しまス。お見知りおきください?」

「ジョイさん緊張しすぎだよー」

 ユニちゃんは空気を読んだのか、他の子たちと遊びにいってくれた。

事務所(うち)仮従業員(アルバイト)で、ついでにあんたとおなじ復元(ストレージ)ができる機会持ち(ユーザー)だ」

「あ、どうも。カルラ・バーズンです。この度はよろしくお願いします?」

 あれ?

「アルバイト……ってことはソラも?」

 見た目の年齢を考えると、実は正社員のように振舞っているアルバイトだとか……なにかとんでもないミスをしている気がする。

「いや、こいつ(ソラ)はちゃんと正所員(・・・)だ。俺の場合は学園生だからねぇ。俺が事務所に入り始めた3年ぐらい前には、もうソラもいたし、見た目に寄らずベテランだよ。こいつは」

 特に飛ばせるとおっかない。

「ソラの場合、もうそのときには事務所が家になってたよねー」

「うん?じゃあソラの年齢って」

 見た目より実はだいぶ上だとか?

「たぶん、15」

 本人から自己申請(推測)きました

「気がついたときにはここ(スラム)にいたもんねー。私と同じぐらいじゃないかなってことで」

 自分の年齢(誕生日)どころか、両親もわからないという子供は多い。らしい。

「んでまあ、俺としては卒業したらさっさと正所員にしてもらいところなんだけど」

「けど?」

「所長も副所長も、ほかのみーんなも出払ってるんだよねぇ」

 このままだと、卒業してもしばらくアルバイトだよ。

 そうジョイさんはこぼす。

「……ジョイ」

「いいじゃねえかソラ。どうせちょっと調べりゃすぐわかることだ」

「……」

「まあそんなわけだから、授業がおわったら俺もお手伝いしてますよと。そういう顔みせだねぃ」

 そして握手をして……学園?授業?

「……今日って平日じゃなかったかしら?」

 学園と呼ばれてるところが、私のいっているところ以外にあったとは聞いていない。

 私は事情が事情だけど、彼は

「あ、サボった……いやだって俺平民だしぃ!就職先決まってるしぃ!」

 こんな人が相棒で大丈夫なの?とソラのほうを見たら、まるで自分は関係ないといわんばかりに、蹴り上げた木材に魔力弾(バレット)を打ち込んで球体を作り上げていた。

 なんか、いやみすぎる。

「あ、そうそう。お仕事ついでにカルラちゃんのおうちもちょっとのぞいてきたんだけど」

 え?

「門前払いくらっちまった。怪しいお兄さんたちもうろついてたしねぇ。でもあの様子見てる限りだと」


「愛されてるねぇ」


 その言葉を聞いて

「あ……」

 涙が、あふれて止まらなかった。

カルラ コマンド表

214K□□□□□展開/復元

214P□□□□□ジェノサイドバレット

214P溜め□□□マナチャージ

214P中溜め□□ジェノサイドブラスター

214P最大溜め□ジェノサイドカノン

421P□□□□□カウンターショット(当身

単発火力は高いがコンボが組めず、独特の軌道を描くため玄人向けのキャラクターである。

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