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本日(?)二本目
やや短めです
とある貴族の館の一室。室内は贅沢な調度品がならび、壁には何枚もの絵画が掛けられていた。
みるものがみればどれも値のかかるものだとわかるが、どこか調和が取れていない。
部屋の奥には無意味にひときわ大きな執務机がおかれその存在感を示している。
外はすでに暗く、ランプに照らされて6人ほどの男たちがいた。
革張りの、巨大な椅子に埋もれるように一人、その傍らに一人。
机の前に五人。
「逃げられて、見失って、丸二日もすぎるというのに、まだ見つからないのかね」
椅子に埋もれていた、小太りで、禿げ上がった頭をもった男が目の前の荒くれ者達に怒りの声を上げていた。
「キミ達は腕が立つと聞いていたから手を回したのだけどね。このままじゃ他の者達のように罰をうけてもらうことになるぞ?」
「い、いやまってくれ。もう少しなんだ」
「そうだ。もうすぐ見つかる」
「だいたい、あんたらはターゲットの場所わかってるんだろ?おしえてくれても・・・」
バンッ
と、男が机を叩きつけ
「つまり、報酬がいらないということだね?」
じっくりと、荒くれ者達をねめつける。
「キミ達は何か勘違いしているようだが、キミ達と私の関係は依頼人と雇用者じゃ、ない」
わかるかね?と念を押すように。
「キミ達はあくまでも『駒』だ。駒は駒らしく言われたとおりゲームを飾ればいいのだよ。ターゲットを殺す。それだけだ。さあ、何をぐずぐずしている。さっさといきたまえ!」
「だ、だが・・・」
「ん?」
不満の声を上げようとした荒くれ者の一人をにらみつけ、黙らせる。
しぶしぶといった形で、荒くれ者達は部屋を出て行った。
「やれやれ、こんなことでいいのかね」
小男は、傍らで無言でたたずみ護衛然としていた巨漢に確認をする。
「ああ、問題ナイ。横槍が入ったことは気にならないわけでもないが、たいした問題じゃぁ、ナイ」
「そうかね。まあ、キミがいうなら問題はないだろうがね。だが手配書の配備は早すぎたんじゃないかね?」
「かまわんさ。実際それらしい跡ものこっているんだ。それだけで十分。『駒』達も先を越されてはかなわないと本腰を入れるさ。それに・・・」
「それに、なにかね?」
「獲物が増えたほうが、楽しいじゃぁないカ」
ニヤァりと、巨漢が狂ったような笑みを浮かべる。
口元にのぞいた、黄色い歯が不気味だった。
「き、キミは無関係の人間を・・・」
巻き込むというのかねと、小男が続けようとした言葉を、巨漢がさえぎった。
「いまさら、だナ」
「・・・・・・」
「ソレをいうなら、この狩り自体しなければよかった。そもそもお前が望みさえしなければよかった。ちがうカ?」
「確かにそうだが・・・」
「何より、お手本が、成功例が、ここにいるんだ。何を迷う必要がアル?」
大げさに、巨漢が両腕を広げて告げる。
「なにも、問題、ナイ」
「そ、そうかね。まあうまくいくなら問題はないが・・・・・・」
「お前は金の計算と、今後の証拠作りをしていればいいのだヨ」
そして、部屋の出口へ向かう。
「どこにいくのかね?」
「なあに、俺も喰いたりないのでね。探しに行くついでにつまみ食いをしようかとね」
家にも帰っていないようだし、どいつが匿っているのかねエ。
つぶやきながら巨漢は出て行った。
男は考える。
本当に大丈夫なのかと。
男は考える
なにか盛大な間違いをしているのではないかと。
男は考える
駒達がターゲットを見失ったといったのはスラムの傍だといっていなかったか?
スラム
川で分断された、帝都の闇。
何度となく強制退去と再開発の手が伸びているというのに、気がつけばまたスラムに飲み込まれているという。
秩序だっているマフィアどもと違って、あそこのやつらは個の集まりでしかないというのにゴキと同じようにわいて出てくる。
いや
今回の件をうまく利用してスラムのやつらを一網打尽にできれば。
そうだ。そうすればさらに上に昇り詰めることができる!
男はおもう。
そう、私の時代が来るのだと。
一人きりの部屋に、哄笑が響いていた。
越後屋そちも悪よのう
投稿時間はやはり一定化させたほうがいいのでしょうか