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あるいは、堕天使の憂鬱  作者: とんぺり
異世界人?と二つのお願い
32/84

2-11

だめだこいつはやくなんとかしねえと

 帰れない。


 帰れない

 帰ることができない

 帰る方法がない。


 なんども言葉を頭の中で繰り返して、聞き間違いじゃないかとどれだけ思ったことか。

 でも、どんなに易しい言い方されても、どんなに直球にいわれても、内容はまったくかわらなかった。


 帰れない。


「うわぁ……あれ大丈夫かなー?」

「知らないわよ。本人が望んでいってくれっていったことだし……これでもかなりダメージが少ないようにいってあげたのよ?」

「うん? なに、ユニ……包丁が危ないって? あー……でもちゃんと動いているし大丈夫じゃないかなー?」

「でももう三日よ?」

 なにかいっている声が聞こえる気がするけど聞こえない。

 何かがおかしい。

 ゲームの世界じゃなかったのか?

 異世界チートヒャッハー俺つえええじゃなかったのか?

 異世界知識で大革命起こしてお願いします領主様抱いてーとかそんなんじゃなかったのか?

 いやどうも実際恋愛ゲームみたいだし、料理でみんなの胃袋ゲットできてるわけだし、実際今いる環境はハーレム目前なんだし。

 このまま好感度上げていけば誰かのルートにきっと入れる。そう。絶対そう。

 これはきっとそういうイベントなんだ。

 異世界に迷い込んだ主人公が、帰れないことを告げられて落ちこんで、それを励ますヒロイン達!

『きっと帰れる』

『大丈夫私がいるよ』

『いいじゃないここで暮らせば』

 そしてヒロイン達と運命のゴールインをした直後、世界の壁という運命によって引き離される二人!

 なみだなみだの別れを惜しみ、主人公は、つまり俺は、元の世界を取るかヒロインを取るかの選択を迫られるんだ。

 つまりエンディングは帰還エンドと残留エンドが各キャラにあるわけで、十個。周回できれば全部回収してもいいようなきがするけど、それはさすがにできないだろう。

 そうなると、やっぱりメイン攻略キャラクターをそろそろいい加減に見据えないといけないような気がしてきたぞ。よしちょっとここで整理しよう。

 まずはクロエちゃん。

 ……うーん、悪い子じゃないんだけど、なんか直球で生きてますというか本能で動いてますというかそんな感じなんだよね。遊ばれている感じもする。それも、大人のお姉さんが男の子で遊ぶとか、素直におもちゃで遊んでいるような。ただ、無防備に抱きつかれた時のあのクッションは殺人級だろおい。なんかメインヒロイン設定されてそうなんだよねこのこ。というか一番付き合いやすいし気がつくと傍にいる。一番構ってくれているからかもしれないけれど。手袋をはずした姿をみないのだけど何の理由があるんだろう? 理由を聞いても『秘密ラよ~』といって答えてくれないしうーむ。あ、おいそこで一緒に風呂はいれていいじゃねえかっておもったやつ表へ出ろ。クロエちゃんたら服脱がないで、入り口から眺めるだけなんだからな! 自分が入る時は人を追い出すんだからな!

 エリーちゃん

 俺のことを調べてきてくれたツンデレちゃん。しかも魔法使いと来た。この子の好感度は、教えてもらった魔法が使えるようになることなんだろうけど、未だに使える気がしない。いやむしろ魔法のお勉強をお願いすればムフフなイベントでデレモードも待っている気がする。クロエちゃんと仲もいいみたいだし、うまく二人の関係を利用するのがいいのかもしれない。ツンデレというかなんというか、ちょっとした事をさらっと手伝ってくれるところがかっこいいぜ。

 リッカちゃん

 なんかやさしいんだけど、たまに何を考えているのかよくわからないんだよね。こう、何日か一緒に過ごしてて分かったんだけど、ポーカーフェイスで生きているというか、普段ソラとよくいるし、手が出せない。手を出す気がおきない。ヤンデレ臭がするなんか怖い。ただ、ソラと二人で百合キャラだ! とかおもったのはいわないお約束。

 ソラちゃん

 ちゃんというか、君だった。

 君だったよちくしょう!

 肋骨折れてるとかで、ギプス替えるとかでつい上半身裸になるところ見てしまったんだが、だって目の前でいきなり服ぬぐんだもん。見なければむしろダメでしょう。見ちゃうでしょう。最初はほんとにない(・・)だけかとおもったけど、本当は男の娘でしたという落ちでした。本人はたぶん意図してない。でもあの顔と声じゃ勘違いしても仕方がないじゃないか最初に男だといってよ!! 俺にモーホーの気はない。けど知った瞬間つい叫んでしまったよ『こんなかわいい子が女の子のはずがない!』と。うん、まあ、ちゃんと彼女ポジにきてくれるなら攻略してもいいかなと思ってしまう。

 ユニちゃん

 角っこ。喋れない。よく身振り手振りや筆談してくれるけど、わからないんだよねごめんね。といっても最近は少しだけ分かるようになってきたかもしれない。この子のルートは彼女というより、妹エンドなんだろうなぁ。最後のエンディングで『おにいちゃんはなれたくない!』って、やっと声を出した時の言葉がきっとそれなんだ。今の年齢から手を出すのはやばそうだけど、エンディングが終わってからが凄く楽しみ。すっごく楽しみ。目指せ光源氏?

 ついでにジョイさん

 なんかお兄さんポジション。友情エンド用とかそっちの腐女子向けのキャラクターなのか?でもなんかいろいろ気を使ってくれる。ほかの子たちよりも、だいぶ。これで一個上だというのだから、ちょっと驚き。できるなら一生ついていきたいぜアニキ。

「なんかニヤついてるわね」

「おもしロいことレもあったのかな~?」

「ユニ、あっちいこっか」

 うん、どうしよう。

 決められない。

 ハーレムエンドとかもありそうだけど、一部の子が門番として立ちはだかっていそうで、無事達成できるかどうかがわからない。

 現在一番好感度が高そうなのはクロエちゃん。

 一番低そうなのはリッカちゃんかソラ。

 ただなんとなく。ってぐらいなんだよね好感度表ください。

 好感度上がればたぶんクロエちゃんは手袋の秘密が分かる。そして一緒に入浴もできる。クロエちゃんはいちど盛大に嫌われそうだなぁ。そのあと仲直りイベントで確定しそうだ。リッカちゃんはこっちを見る目がかわって、エリーちゃんはくっついて歩きそうだ。ソラは笑顔が一瞬だけ見えるとか?

 それよりも、好感度表以前に、普段みんなが何やっているのかがわからない。

 なにか探偵みたいなことをやってるらしい(・・・)というのはわかったけど、手伝いたいといっても邪魔、必要ない。で避けられちゃうんだ。

 でもそうやって好感度って稼ぐものでしょう? 目的のこといっしょに行動して稼ぐんでしょう?

 せめてどこにいるかわからないと稼げるものも稼げないじゃないか。

 たしかに俺はまだ剣もつかえないし魔法も使えないけど、主人公補正というものもあるのだよ。

 つれてって損はないと思うんだけどなあ。

 いやそもそも、つれてってもらえるほど好感度高くない……?

 あれ、衝撃の事実がわかるのって大体物語り中盤だよね?

 それでこの好感度ってことは……

 いや、きっと俺のこと心配して……くれてる表情じゃないんだよね。あの断られてるときの顔。

 う、ん。

 このままだとあれだ。

 ノーマルエンド。みんなと特に進展も無かったけど一緒に暮らしましたで終わってしまう。もしくは無事帰ることができましただけで終わってしまう。

 最悪、バッドエンド。帰ることもできず、だれかとラブラブハッピーになれることもなく、今いるこの事務所からも追い出され、一人寂しく暮らしていくルート。

 考えたくないなぁ。

 でもなんか可能性高そうなんだよなぁ。

 このまま何もないなら、誰ともゴールインできないなら、やっぱりできるだけ早く帰りたい。

 ひょっとしたら他のモブキャラみたいな子たちにもルートがあるかもしれないけれど、そっちには入れそうな気配もないし。

 ちょっと外に出よう。

 このままここにいたら余計なことも考えそうだ。

「……ちょっトでてきまス」

「あ、うん」

「大丈夫かなー?」

「安全ラよ~?」

「そうじゃなくてね……」

 この町の人たちは優しい。

 最初の一日、二日ほどこそよそ者を見るような目だったけれど、クロエちゃんが一緒に散歩といって歩いてくれてから様子が変わった。

 道を歩けば一度でも顔を見た人は声を掛けてくれるし、中にはおまけをしてくれる人もいる。

 最初はお金の計算にもちょっと手間取ったけれど、慣れれば暗算もできて、暗算ができることに驚かれた。

 そして『外国から来たんだってなぁ。がんばれよ』と肩を叩いてくれたんだ。

 みんないい人達ばかりで、でもたまにスリにもあう。

 一度スリにあったら財布をいくつかにわけて持つようにいわれた。財布のチェーンは珍しかったのか、よく観察されもした。

 ただ、でもやっぱり自分は異邦人なんだよね。

 顔が違う。肌の色も違う。景色も違う。いままですんできた環境も違う。

 あの事務所にいるときに感じる、居候という感覚が、町の中にいても感じられるんだ。

 旅行者じゃなくて、居候。

 ここが自分の場所じゃないっていわれてるようで、足元がぐらついて仕方がない。

 そういえば、たまにおなじ服を着ている少年少女がいる。

 同じぐらいの年齢みたいな感じだけど、学校でもあるのか?

 学校。

 元の世界でいくのはなんか退屈だったけど、こっちの世界のならいってみてもよかったかもしれないな。

 計算の仕方も大体同じだし、言葉の壁さえなんとかなればひょっとしたら異世界人として有名に慣れたかも。

 いまはクロエちゃんたちのいる事務所のルートになっちゃってるけど、できるなら学校ルートというのもよかったかもしれないね。

 学校といえば、クロエちゃんたちみんな学校へいっててもおかしくないような年齢なのだけど、彼女達はなんでいってないんだ?

 いけないのか、行く必要がないのか、何か別の理由があるのか。

 考えてみればあの年齢で探偵の真似事って異世界ちっくでいいじゃないかとおもったけど、学校があるのにいってないってのもなんか問題なんじゃ。

 そして最年長のジョイさんがアルバイトで学校へいってる、らしい。

 たまに彼女さんみたいな人つれてくることもあるけど。

「おー、アツヤ、なんかくってくかい?」

 気がつくと、以前きたことのある酒場の前にいた。

 店主が自分から呼び込みをしている。

 あたりは暗くなってて、混み始めるちょっと前の空白な時間帯だった。

 中を覗いてみると、ちらほらと早めの客が入ってるぐらいで、まだだいぶがらがらだった。

 たまにはいいかもしれない。

 酒場にはいりこみ、適当な注文をする。

 お酒が出てくる。

 酒。

 酒に関しては、未成年とか成年とか関係ないらしい。

 あまりにも無理そうなら出さないが、飲めるなら自己責任で。

 出されたグラスをあおる。胸がカーっときて、くらっとする。グラスを叩きつけて、頭をちょっとだけふる。

「モーいっぱイ」

 出されたグラスをあおる。胸がカーっときて、くらっとする。グラスを叩きつけて、頭をちょっとだけふる。

「モーいっぱ、イ」

「おいおい、いきなり早すぎるぞ?」

 異世界がなんだ畜生。こっちは現代っ子のもやしっ子なんだ。能力チートも言語チートも知識チートも無くてこんな世界でどうやって過ごしていけばいいんだなんとか言葉は喋れるようになったし聞くこともできるけどまだ時々間違えるし分からないのもあるし帰り道はないし本当にいてもいいのかわからないし女の子は全然好感度上がらないし好感度上げれないしステータス分からないしこれなんてクソゲーだどうやってすごしていけばいいんだホントにチートくれよまったくお願いだから帰りてーよ帰らせてよそういや秘密フォルダ消してないや母さんに見られて引かれないかなやっぱり帰らないと死んだらどうなるまたあそこから今ティニューかおわりなのかセーブポイントなんて無かったしやっぱり家が一番だ帰りた


『隣、いいですカ?』


『あー、ローぞー……』

 誰だコイツ。いつのまに来たんだ?

 長い髪のばして女みたいだ真っ黒なコート着て中二かてかいくつだわかんね髪の色もあわせて真っ黒くろすけだ背ーたけーなんか落ち着く声だ……って

『あんた!? 今の言葉!?』

『やはりですカ。知り合いに似ていたのデひょっとしたらトおもっテいたのですガ』

 言葉だ。ニホンゴだ久しぶりに聴く懐かしい言葉だ

『相当マイってるようですネ』

 そりゃそうだよいきなりどっかに放り出されて言葉もわかんねーチートもねー誰も助けてくれねーおれになんか力があったらこんな状況すぐになんとでもなるというのにその片鱗すらネー力がほしいよ

『そうですカ。力ですカ……だったらこれヲ』

 なんだこれ、銀色の箱? 金属? プラスチック? てかどうやって開けるんだ?

『君が望んだときに、勝手にあきまス。いべんとあいてむッテやつですヨ』

 イベントアイテム……うん?


「おい、アツヤ、おきな」



 ……え? 朝?

「えっと……」

「代金、ちょっとだけまけといてやるから」

 うん? えっと……

 追い出されて、さっきまでのことは夢だったのか。

 おかしい。夕方に酒場に入ったはずなのに、もう朝になってる。

 タイムスリップでもしたのか?

「……痛い」

 ほっぺたをつねったら痛かった。

 それに、手元にはよくわからない銀色の箱が残ってる。

「夢じゃなかった……夢だけど、夢じゃなかった!」

 イベントアイテム……なにがおきるのかもわからないけど、つまり、そういうことだ。

「神はいっている。まだここであきらめる定めではないと!」

 よし、事務所に帰ろう。あいつら俺がいないと碌なもの食べてないからな!

 でもそのまえにどこか吐くところ……アタマイタイ。


やっと運が向いてきました


市民の生活

都民というか、国民というか。

その将来は家柄というよりも、周囲の環境によって左右されやすい。

一つは一定の年齢になるまで親をはじめとする保護者の下で訓練をしながら過ごし、独り立ちできる年齢となったら冒険者やハンターとなるもの。特に貧困層や夢を見る人が選ぶ、当たり外れの多い未来。

一つは学園をはじめとする教育機関へと入り、卒業後それぞれの職につくもの。堅実で、家業を継がなくてもいいという人間がよく選ぶ。

そしてもう一つは何らかの形(丁稚奉公、侍女勤め等)で奉公を行い、幼いうちから手に職をつけるもの。将来は約束されているものの、独立できるまでが長い。今尚残る因習の一つでもある。

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