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¥PRICE¥  作者: 羽依音
入学篇
6/105

03

 3人が部屋から出て行った後、外で待機していたっぽい奴が入って来た。

 ショートレイヤーのピンパーマ。髪色は、白と青のグラデーション。

 服装は黒のつなぎ。左腕に、和柄の緑の腕章を付けてた。


 「はじめまして。緑会友の会、二年のブルーハワイです。寮まで送りますね」


 名前聞いた瞬間、また鼻水出そうになったけど、髪の色見て納得した俺がいた。

 本当に。名前って何でもいいんだな……。


 「あの、友の会って……?」


 「あれ? 聞いてないですか? ……まあ、前期の方々が卒業したばっかりだし仕方ないか……。

 左腕に、この腕章を付けているのは、友の会の生徒です」


 早い話が緑会の方々のサポート役。

 後、風紀委員的な役割もしているらしい。

 緑会友の会の印は、緑に白の吉原つなぎ文様の腕章。

 美容会友の会の目印は、左胸に赤い薔薇のコサージュって、ブルーハワイ先輩が教えてくれた。


 「キミも頑張ればスカウトされるかもしれませんよ?」


 「はあ……」


 ━━申し訳ないです。全く興味ありません。


 「この建物は、何かの施設ですか?」


 「学¥の第二棟ですよ」


 「えっ……? ここも、学校ですかっ!?」


 「一応、そうなりますね。第二棟は、20階建てです。

 1階はカフェで、その上は部室や店舗や施設ですね」


 「…………」


 カフェ以外にも店舗入ってんだ……。

 部室ねぇ……。何か、面白そうな部活あったら入ってもいいかも……。

 絶望的になるより、気分転換した方がいいもんな。メンタル的にも……。


 エレベーターが一階に着くと、透明なガラス窓から、オシャレなカフェの店内が見えた。

 今日は、祭日。入口は、シャッターが閉まってた。


 学¥の敷地内は、洋風の街灯が設置してあって、地面は芝生。

 外は、すっかり夜。月と星空が綺麗なのに……。虚しい気持ちになるな……。

 第二棟の隣に、大きな建物が見える。きっと、アレが学¥……。

 地元の高校は、小中学校から仲良い奴らと一緒だったけど……。

 クラスに馴染めるかな……。憂鬱……。


 外には数人の警備員が配置されている。脱走不可能。

 それについて、森恩が説明してたな。

 仲良くなったクラスメートにでも聞けばいいと思って、聞き流しちゃったけど。




 学¥の裏が寮。50階建ての、高層マンション。

 街灯のおかげで、マンションの色も確認出来た。

 1年は白。2年はオレンジ。3年はピンク。

 3年が卒業したら、来年の1年が使うらしい。


 49階に、大浴場があって24時間いつでも利用出来る。

 25階は、食堂とコンビニ。

 食堂は朝6時から夜22時まで、コンビニは、24時間営業。

 第二棟の二階に、美容院とペットサロンがある事を教えてくれた。


 ペット可なんですねって聞くと、サロンが預かりもやってるみたいで、子犬とか子猫も飼えるって教えてくれた。

 ペットショップは、ショッピングモールにあるそうです。

 料金が発生するけど、躾もやってくれるらしい。


 ブルーハワイ先輩は、フレンチブルドックを飼ってて写メを見せてくれた。

 とっても、ムチムチした白黒のザラメ君。去勢済み。

 散歩の時、引きずられる先輩を想像して、思わず笑いそうになった。


 「俺は、今日から、食堂を利用出来るんですか?」


 「出来ますよ。今……21時30分か……。部屋に行く前に、食堂行った方がいいと思います。

 食堂の利用費は、行った回数に関係なく、月末に5千円引かれるので。

 後、寮費と光熱費合わせて1万5千円と携帯代も月末に引かれます。

 あっ!! 火曜日は何時に起きますか?」


 「えっ!? 何時に起きれば間に合いますか??」


 「8時20分に、朝のHRなので……。8時に、エントランスで待ってて下さい。

 俺と同じ制服の、友の会のメンバーが迎えに来ます」


 「分かりました……」

 つなぎが制服っ!? いいなー!! 二年生!!


 「色々あって疲れたでしょう? 今日は、大浴場行って早めに休むといいですよ。

 部屋にも、風呂は有るからご心配なく。

 じゃあ、新生活楽しんで下さいね。おやすみなさい」


 「ありがとうございました……。おやすみなさい……」




 ブルーハワイ先輩に言われた通り、俺は食堂に向かった。

 高層マンションで1人暮らしか……。

 本当に1人暮らし……? 実は、団体生活ですってオチはねぇよな……?

 気が合わなルームメートだったら、困る……。絶対、無理っ!!

 宇治金時さん、カードキーって言ってたしな……。

 いや、 4LDKって可能性も……!!


 「聞いときゃよかった……。ブルーハワイ先輩に……」


 食堂は、グレーと黒のチェス柄のカーペットの廊下。

 エレベーターの正面が、コンビニだった。名前は、キャンディマート。

 金髪と黒髪の男の店員が、レジで喋っているのが見えた。


 食堂は、吹き抜けの造り。

 パルテノン神殿みたいな柱に、緑の葉っぱが巻き付いている。

 木製の丸テーブルと籐の椅子。

 どうやらバイキングみたいだけど……。食い物が全くないんですが、どうしよう……。


 「あっ、来た来た!! 士季君だよねー?」


 「はい…………」


 「今日、来たんだって? いらっしゃいー」


 「もしかして、待っててくれたんですか……?」


 「だいたい、皆21時前には食べ終わっちゃうからねー。

 何食べるー? 何でも作れるよ」


 「ありがとうございます……!!」


 黒に白の龍柄のバンダナを巻いて、明るい茶髪の髪を白のクリップで無理くりまとめてた。

 年齢20前後っぽいお兄さん……。

 自然に、首から下げてる社員証に目がいった。


 「ああっ!! お兄さんだったんだ!! 俺の、第一希望ネームの使用者……」


 「えっ? ああ、キミもコレにしたかったんだ。

 子上。ごめんね、使用済みで。好きなの? 司馬昭」


 「いや、好き度は普通なんですけど……」


 「何だそれっ!? 感じ悪~……」


 「いや、急に名前決めろって言われて焦っちゃって……。

 あ・か・さ・しって、一番最初に浮かんだのが司馬昭だったんです」


 「あ行、か行、さ行から、た行にいかないで、しに移行したんだ」


 「だから、焦ってまして……。お兄さんは、何で子上に?」


 「んっ? ああ、三国志好きなのもあるけど……。やってたゲームで、持ちキャラだったから……」


 「ああっ!! 俺も好きですよ。そのゲームっ!! ストレス解消になりますよねっ!!」


 俺は、子上殿に天津丼をオーダーした。子上殿と、 アクションゲームトークで盛り上がって、やっと素の自分に戻れた……。

サラダと春雨のスープも作ってくれて、味はめちゃくちゃ美味くて感動……!!


 「美味しいっ!! 子上殿、料理お上手ですね……。すごい……」


 「あははっ。いや、普通レベルだって。中華に合わないけど、どーぞ」


 「…………」


 食器を返却口に持って行こうとしたら、子上殿はある物を持って来てくれた。

 お椀サイズの苺ショートのバースデーケーキ。


 「今日、誕生日でしょう? ハッピーバースデー♪」


 「…………ッッ!!」


 本日、二度目のバースデーケーキ。

 一回目は、メイドカフェ。二回目は、食堂。


『一生恨んでくれてかまわない……!!!!』


 ━━俺が欲しかったのは、そんな言葉じゃないよ。父さん……。

 最後の別れなら、言ってほしかった……。


『颯真、誕生日おめでとう』って…………。


 二度と呼ばれる事のない、父さんと母さんが付けた名前を、最後に呼んでほしかった……!!


 声を殺して泣く俺の頭を、子上殿は優しく撫でてくれて、『頑張れ……』って言ってくれた。


 ねぇ、子上殿……。何を頑張ればいいの……?

 絶望的なこの場所で、何を頑張れっていうんだよ……!!

 でも、あたなが優しい人なのは分かったよ……。ありがとう……。

 

 商品として、割り切れるように頑張るよ……。

 それが、ここでの生き方だから……。

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