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第二章1-8 謁見するはずだった ◆

6/10誤字直しました

――――キルア――――



客間から王が待つという謁見の間へと続く廊下をユリアの後に続いて歩いていた。



「なぁ、ユリア・・・」


「すみません黙っていてください」



後も振り替えらずに返した・・・しかも、かなり不機嫌な声音で・・・。


客間から出てからユリアはずっとこの調子だ。


今まで、他人と触れ合わない生活を送っていた我にはユリアが、なにに対して怒っているのかが分からない。


時々ナターシャの行動や心情が分からない時がある。


・・・そういえば、ユリアは心情に関しては何も分からないな?


いきなり泣いたり、喜んだり、落ち込んだり、怒ったり・・・。


これが、他人と言うものなのか?


今までは自分の気の向くままに生きていたが、これからは、相手の気持を考えて、行動しないといけないのか?



「キルア様。着きました」



ん。考えながら歩いてあたら謁見の間の前まで来ていたようだ。


謁見の間の扉は、この城のどの部屋の扉よりも立派で、大きく装飾まで施されていた。


扉の前に立っている武装した門番の様子からも、ここが人間にとって重要な部屋だと分かる。


門番が扉を開け、中へ入るように促した。




謁見の間は、とても広く赤い絨毯じゅうたんが道のように敷かれ、その先には段差があり、一段高くなっていて、その上に豪華な椅子が2つ並び、左側にこの国の王だろう男が座っていた。


ふむ。あれが、王座という物か、確かに今まで見てきた椅子の中で一番高そうだな。


だが、椅子に座る男は本当に王なのか?


ビクビク怯えているし、真っ青な顔で我を見ているし、威厳と言うものがまったく感じられない。


本の挿絵の王のほうが堂々として格好良かったのに、やはり実物はこんなものか・・・すこしがっかりだな。



「キルア様。王の前まで、お進みください」



いつの間にかナターシャは、先に進み玉座の近くに立っていた。


まったく、主を置いて先へいくとは・・・。


ユリアの隣まで歩き、国王を見上げる。


国王の目を見たときあからさまに逸らされたが、もういい無視しよう。



「き、貴公がキルアか?」


「ああ、キルアだが?」


「・・・」


「・・・」



・・・何だコイツは?



「お父様。とりあえず、マントを脱いでもらったらどうでしょうか?」



王座のそばに立っていた、ドレスを着た女が我に聞こえないように、国王に耳元で進言しているが、我の耳には言ったことすべてが聞こえているから意味が無い。


国王を父と呼ぶのならこの女は姫になるのか?


まあ、今はいいか。


というか、国王に気を取られて他の存在を忘れていた。


国王のそばにいた真っ赤なドレスを着た女に気がつかなかった。


ドレス女は、綺麗は綺麗だが、なにか違和感がある。


なんだろう?


ドレス自体華やかで女の美しい容姿と相まって、絵画のようだが、引き込まれない・・・心が反応しない。


あと、謁見の間にはこの4人しかいない・・・。


扉の前には武装した門番がいたが、中には武器を持っているものは誰一人としていない無用心すぎるだろう。



「と、とりあえず、マントを脱いでくれるか? 顔が見たい」


「キルア様、ナターシャもマントを脱いでください」



やっと、このマントを脱げるのか。


マントに手をかけ脱ぐ。



「ふう、これでいいか?」


「あっ、ああ・・・」



なんだ? この怯えようは?



「そ、そなたは本当に黒竜なのか?」



まあ当然、疑問に持つだろうな



「そうだ。今は人間の姿をしているが、我は、黒竜王が第一子。黒竜のキルアだ」



威厳たっぷりに堂々と胸を張って答える。



「「「・・・・」」」



なんだ!? 格好良くキメたはずなんだが、場の空気が凍りついた?



「ああっ・・・!」



ユリアが崩れ落ちて床に手をついた!?



「ほっ本当に黒竜の王なのか?」



国王が顔の色を益々青くしながら聞いてきた。



「黒竜王の息子だ。まあ、王子か? ん? 父上がいなくなったから今は我が王か? ・・・まあ、王で合っているな」


「・・・・ううぅ・・・・」



なっ!? 国王がいきなり泡を吹いて椅子から崩れ落ちるように倒れた・・・!?



「こっ、国王様!?」


「・・・おっ、お父様!?」



ユリアがつかさす駆け寄り、少し遅れて我を取り戻したドレス女がユリアに続くように国王を抱き起こす。



「「どうなさいましたか!!」」



ユリアと、ドレス女の大声に部屋の様子を心配した門番が扉を開けた。


・・・。


・・・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・・・。


「国王様が倒れている!?」


「お前ら! 国王様になにをした!?」


「おいっ! 黒髪の男の隣はダークエルフだぞ!!」


「なっ!? まさか暗殺者か!?」



なっなんだ!? 



「くせ者だーーー!!」



一人の門番が城に響き渡るように大声を上げ、兵士を呼ぶ・・・。



「お・・・い、ユリア・・・?」



なっ!? ユリアを呼ぼうとしたら王座の後ろにある通路から、ドレス女と一緒に、国王に肩を貸しながら部屋から出て行いくところだった・・・。



「キルア様! 私の後ろへ!!」



ナターシャが身をもって守ると言わんばかりに我の前に躍り出たが・・・。



「待て。ナターシャ」



ナターシャの肩を後から手で掴み、自分の腕の中に引き寄せる。



「キっ! キルア様!?」


「おっ、お前は・・・わっ、我の僕だ! 僕を守るのは主の務めだし! 我は雄だ! 雌に守られる側じゃなく守る側だ!!」


「キルア様・・・」



怖い! 怖い! 怖い!


武器を持った騎士がたくさん集まってきた!


しかも、まだこの部屋に向う足音がたくさんあるっ!!


部屋を埋めるように騎士が集まり、槍や剣を向けてきた!



「キルア様ー!!」


「わっぷっ!」



突然、腕の中にいたナターシャが抱きついてきた・・・。


むっ、むぐっ!?


ナターシャの胸で前が見えないっ隙間からなんとか息は出来るが、前が見えないっ!



「ナっ、ナターシャっ・・・!?」


「ああっ、あまりしゃべらないでくださいっ・・・息が胸に・・・」



ちょ! ちょっと、待て敵がいるんだぞ!?



「お前らぁ! 無視するんじゃない!」


「というか、イチャついてんじゃねぇ!」


「そうだ! 状況がわかってねぇのか!」



ああっ、ピリピリとした殺気が部屋を満たしていく・・・。


怖い! 怖い! 怖い!



「そこの餓鬼! 調子に乗るんじゃねぇぞ!」


「お前から痛めつけてやる!」


「女の前でボロ雑巾のようにしてやる!」



騎士が我にさまざまな怒気を含んだ暴言を放ってきた。



「キルア様。ご安心ください」



ナターシャが優しく額にキスしてきた?



「ナターシャ・・・?」


「少しだけ待っていてくださいねっ、ゴミを掃除しますので」



ナターシャが優しい笑みを浮かべながら頭を撫ぜてくれた。


ナターシャは、頭を撫ぜ終わると一歩前に出て、周りを取り囲んでいる騎士たちに睨みをきかせた。



「さてと、あなた方? 覚悟はよろしいでしょうか?」



ナターシャが部屋中に浸透するように声をめぐらせた。



「なんだ? 結局女が相手になるのか?」


「はっはっはっは! 男のほうを見てみろよ! 眼つきだけは立派だが震えてやがるぜ!」


「まったく、情けないなぁ!」



騎士たちがよく聞こえるように大声で罵倒してくる。



「・・・・死にたいんですね?」



ナターシャの顔から表情が消えた?


ナターシャの体から部屋を埋め尽くすように魔力があふれ出きた。



「なんだ! この魔力は!?」


「ダークエルフでもこんな魔力は・・・」


「魔法がくるぞ! 構えろぉ!」


「いや! 発動する前に潰せば・・・・」


「さあ、凍え死になさい・・・【ブリザード】」



ナターシャを中心に冷気の波が発生し、部屋にいた騎士たちを一瞬で凍らせる。



「キルア様。終わりましたよー!」


「あっ、ああ。ありがとう・・・」


「いいえっ、これぐらいなんでもありませんよ」



嬉しそうに擦り寄ってきたが・・・謁見の間には、部屋を埋め尽くさんばかりの騎士達の氷の彫像が・・・。


・・・。


・・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・。


まだ、ほとんど話していないのに・・・どうして、こうなった・・・・?


ナターシャが後から抱きついてきた。


この寒い部屋の中ではナターシャの体温は暖かくて心地がいい。


・・・あぁ、もうどうでもいいや。


とりあえず、どこかで寝よう・・・。

 

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