第一章4-9 夕食とお風呂 ◆
――――キルア――――
ユリアとナターシャが夕食を持ってきた。
白パンと干し肉とシチューで特にシチューは美味そうだ。
ユリアとナターシャが部屋にあった机をテーブル代わりに2人分の食事を並べていく。
「なぜ2人分だ?」
「ご主人様とユリアーナ様の分でございます」
ふむ。どうやら夕食を摂りに行く間に簡単な自己紹介でもしたんだな。
だが、ナターシャはいろいろと間違っている。
「ナターシャ、お前はどこで食事を摂るつもりだ?」
「はい。床でございますが?」
「却下だ。机に並べてきちんと座って食べろ」
「えっ・・・ご主人様たちと同じ食卓を囲むのですか?」
「当たり前だ。あと、ユリアのことはユリアでいい。こいつも俺の僕だ。様などつけるな」
「はい。わかりました」
ナターシャは床に置こうとしていた料理を机に並べる。
「じゃあ、食おうか」
「「はい」」
ナターシャは戸惑っていたが食事が始まるとゆっくりと食べ始めた。その食べ方は、まるで見本のようで、食べている姿も美しく見えた。
食事を終え、宿屋に食器を返した後、すぐに風呂の用意を頼んだ。
入浴できる場所は一つしかないので、一人ずつ入っていく。
昨日と待ったときは、最初に我が入り、次にユリアが入るというものだったが、今日はなぜかナターシャがついて来た。
「どうした?」
「お背中を流しに・・・」
「そうか、じゃあ頼む」
「はい。ご主人様」
ナターシャを連れて、風呂場へ向う。
風呂場の手前に設けられた脱衣所でマントと貴族服を脱ごうとしたら、ナターシャが服を脱ぐのを手伝ってくれた。
風呂場の扉を開け、用意されていた大きな桶に入る。
桶の深さは大体、膝程度と浅く、横に長くなるように造られている。
足を伸ばすことは出来ないが、座って下半身を暖めることは出来る。
「ん? どうした?」
「いえ、体を洗わないんですか?」
「いや、それは最後にやるが? 何か間違っていたのか?」
「いえ、一般的には先に体を洗ってから入るものかと・・・」
「そうなのか? ユリアはそんなこと言わなかったが?」
というか、ユリアは体の拭き方がらいしか習ってないな。
まあ、次からそうすることにしよう。それよりも、ナターシャだ。
「それよりも、何でお前は服を着ているんだ?」
「!!」
「風呂場では服が濡れると思うが?」
「はい・・・。わかりました」
当然のことを指摘しただけなのに、ナターシャは顔を赤らめ羞恥に耐えるように、服を脱いでゆく。
「これでよろしいでしょうか・・・?」
「ああ」
褐色で艶のあるの肌が灯りのもとへ晒される。それにしても、ナターシャの声が消え入りそうにかすれ震えている。
「やっぱり、綺麗だな。肌の色といい銀髪もキラキラと光っていてすごくいい」
「・・・っ」
褒めたというのに、ナターシャは羞恥と屈辱? を感じている様子で顔を背け、唇をかみ締めている。
「まあいいか、ほらお前も入れよ」
この桶はあまり大きくないが、ナターシャが入るスペースはある。
「わかり・・・ました・・・」
ナターシャは嫌々と桶に入ろうとするが、それよりも先にやることがあった。
「待て」
桶から身を乗り出し、ナターシャの首についてある首輪に手をかける。
「これが邪魔だ。外せないのか?」
「・・・えっ?」
「好きでつけているわけじゃないんだろう?」
「それは・・・そうですけど・・・」
「じゃあ、いらないじゃないか」
「・・・」
力を込めて、首輪を引きちぎる。案外簡単に外せた。買った本人だからか?
「・・・よかったんですか?」
「いいに決まっている。ほら、腕輪も外してやるから腕を出せ」
「・・・わかりました」
ナターシャの腕輪に手をかけた瞬間。
突然、バンッ!! と風呂場の扉が勢いよく開けられた。
「キルア様っ!! ちょっとお待ちくださいっ!!」
ユリアはそう怒鳴りながら、風呂場に押し入ってきた。
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