第一章4-5 到着エクタール ◆
――――キルア――――
ユリアが言った通り、森を抜けると周りは黄金の麦畑になっていた。
麦畑を両脇に挟んだ道の先には白い壁に囲まれた街が見えてきた。
たぶんあれがエクタールだろう。グラールと同じぐらいの大きさの街だ。
日が傾きだし、エクタールが近くなってきたので、マントのフードを被り、ユリアと手綱を交代する。
荷台に隠れていてもよかったが、あまり意味が無い。この荷馬車には、屋根がついていないのだ。
この旅の間、今まで雨が降らなかったのは奇跡に近いだろう。
荷台に積んである食料などの荷物は、ただの大きな布で覆われているだけなので、これで激しい雨でも降ったのならパンなどは腐っていただろう。
我もユリアも毒は効かないといっても、腐ったパンを食いたいとは思わない。
ユリアもこの街で荷馬車の荷台を覆えるぐらいの防水性の高い布を買うそうだ。
なぜ前の街のグラールで買っておかなかった理由は、なんでも「あのときは、心にそこまでの余裕が無かったから」だそうだ。
ユリアと街について何を買うかを相談していたら、いつのまにかエクタールの入り口に到着していた。
エクタールの入り口には二人の男が槍を持って立っていた。
「止まれ」
男たちが警戒するように近づいてきて、ユリアと話を始めた。
男たちはユリアに通行許可証を要求している。
ユリアは懐から小さな羊皮紙を出し、男たちへ見せる。
「こ、これはっ! 王国騎士団の方でしたか、どうぞお通りください!」
男たちは、急に態度と言葉遣いを改め緊張した面持ちで道をあけた。
ユリアは男に一瞥して荷馬車を進めていく。
「ユリアお前って偉かったのか?」
「いいえ、私は偉くありません。私が所属している騎士団という団体が偉いんですよ」
「それって、お前が偉いって事じゃないのか?」
「いいえ、意味合いが違います。騎士団が偉いのであって私自身は庶民で偉くはないのです」
「難しいな人間は・・・」
「そうですね。まあ、今の私の存在はキルア様の僕ですから、これからは関係ないかもしれませんね」
それからユリアはしゃべろうとせずに宿屋に着いた。
今は、金貨しかないので、高い部屋に泊まることになった。
ユリアは明日、この街にある換金所に金貨を持っていくそうだ。
たった一泊に金貨を1枚も払ったことに、後悔している様子だったので、明日はまず換金所に行くだろう。
金貨1枚を支払って借りた宿は、前の街で2日目に泊まった部屋(というか、ユリアしか寝ていないが)よりも家具などは小さかったが、1日目に泊まった部屋の二倍は広かった。
ベッドも二つで、体を清めるためのお湯を大きな桶いっぱいに2つ、一階の奥の浴場に用意してもらった。
いつもは、タオルを水で濡らして体を拭くだけだったが、今回は、温かいお湯に浸かりながら体の汚れを落せるのは嬉しかった。
これには、ユリアも、高いお金を払った甲斐があったと喜んでいた。
ユリアは明日、街の市場に買出し行かないといけないから、早く寝ることにするとのことで、やることを終えるとすぐに、部屋の明かりを落してしまった。
まあ、ユリアも今までの不寝番で疲れていたのだろう
だが、それにしても最近は、日が暮れるとすぐに眠るようになったな。
それと、これからは、安全のために常に一緒に行動することにするとも話していた。
明日の買出しにも、我を連れて行くと言っている。
顔を見せずに黙って隣にいればいいので、騒がれたり拝まれたりすることは無いだろうとユリアは言っていたが不安だな。
まあ、とりあえず今日は寝るか。
明日は人ごみを通ることになるだろうし、少しでも今は休んでおこう・・・。
また、書き終え次第に更新しますね。
たぶん、今日中にまた更新できると思います
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