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第一章4-3 ユリアの焚き火禁止令 ◆

今日から三連休!


頑張って更新しまくりますね

――――キルア――――



小鳥のさえずりが聞こえてきた。空気の感じからたぶん朝だろう。


落ちそうになるまぶたを擦って、周りを確認する。



「うーん・・・」



荷台から見えた景色は、周りを背の高い木に覆われた森だった。



「ユリア・・・?」


「はい。キルア様、起きられたのですね」



ユリアは、荷馬車の荷台で不寝番をしていたようだ。


呼んだらすぐに顔を覗き込んできた。



「今どこだ?」


「はい。1つ目の山の中腹辺りです」


「1つ目の山?」


「はい。私たちが今通っている道は、最短の道で、山を2つ越えるんです」


「ん? 最短の道と言うことは、他の道もあるのか?」


「はい。その辺は、進みながらお教えしますので、まずは、朝食を摂りましょう」



ユリアは、そう言うと白パンと水を渡してきた。


袋から肉のいい匂いがするのだがそれは、昼と夕食用にとっておくらしい。


あの、街は嫌いだが、街で食料をたくさん仕入れたおかげで、今日から基本的に3食、朝、昼、晩と食事を出来る余裕が出来たそうだ。


いい食料が手に入ったことは喜ぶべきだろうな。


正直、いつも同じだと味気なくなってしまうし、ジーナに貰った白パンとソーセージを食べた後だとライ麦パンはあまり美味しくなく感じてしまう。


昼には肉を用意すると言っていたので期待しておこう。


ユリアが街から仕入れた肉は、肉を味付けして乾燥させた干し肉があると言っていた。


干し肉かー。どんな味がするんだろう?



「キルア様、そろそろ出発しますよ」


「ああ、じゃあ、手綱は俺が持つよ」


「いえっ、いいですよ。私はしもべですし、キルア様は寝ていてください」


「俺も、そうしたいが、ユリアは前それで倒れたじゃないか? だから、手綱は俺が持つよ。ユリアは夜の不寝番のために寝ておいてくれ」


「はい、わかりました・・・」



しぶしぶユリアは了解してくれたようだ。



「じゃあ、出発するか。ユリア、このままこの道を進めばいいのか?」


「はい。このまま進んでください」


「わかった。じゃあ、暇つぶしに朝食の前に言っていた話を聞かせてくれ」


「わかりました」



馬の手綱を握りゆっくりと走らせ始める。



馬を走らせている間、ユリアに今走っている道と他の道について教えてもらった。


さっきのグラールという街から、次の街へ向う道は3つある。



1つ目は今通っている。まっすぐ山を二つ越えて、10日ほどで着く最短の道。


2つ目と3つ目は同じで、迂回しながら進む道。


どちらも、1つ目の道の倍以上時間がかかるそうだ。


それに、迂回路にある村や町は治安が悪いし、今は補給する必要が無いので寄る必要も無いとのことだ。


だが、この最短の道も危険なことがたくさんあるらしい。


まず、この山には魔物がたくさん住んでいるし、光がまったく無いこと。


きちんと道に沿って進まないと迷う危険性があるし、二つ目の山にはよく山賊がでるらしい。




ユリアはそれだけ説明するとすぐに眠ってしまった。


よほど疲れていたのだろう。我は丸2日ほど眠っていたようだし、その間はずっとユリアが一人で荷馬車の操縦と寝ないで不寝番をしていたようだしな。




日が高くなってきた。もうすぐ昼だろうからユリアを起こして食事を用意させるか。




「ユリアっ!」


「はいっ・・・なんですかキルア様?」


「もうすぐ昼だから昼食を用意してくれ」


「わかりました。今用意します」



ユリアは眠たげにしていたが、白パンと干し肉を手渡してきた。


移動しながら食べたが、ユリアが昼食として用意した干し肉は最高だった!


ちょうどいい歯ごたえで肉その物の旨みが凝縮されていてすごく美味かった!


期待以上の美味さだった。


荷台のユリアも、よっぽど肉が食べたかったんだな。久々の肉だと言って、涙を流しながら食べていた。


我が寝ている間に食べればいいのに、ユリアは我慢していたそうだから、その分美味く感じたようだった。




馬車をずっと走らせていると日が暮れ始めた。


そろそろ、キャンプする場所を探したほうがいいだろう。


馬車を進めながら、あたりを探すと、ちょうどいい広場が道の先に広がっていた。



「ユリアっ、今日はあそこで休もう」



ユリアはもう起きていて、荷台で新しく手に入れたという。鋼の剣の手入れをしていた。


いつでも、魔物や山賊が着ても対処できるように精神統一も兼ねて、剣を砥石で研いでいた。




「はい。そうですね。では、馬車を止めて夕飯にしましょうか?」


「ああ。わかった」



馬車を広場に止め、昼間と同じ白パンと干し肉を夕食に食べているときにあることに気づいた。



「ユリア、そう言えば焚き火はしないのか?」


「たっ、焚き火ですか?」


「ああ、最初の村からさっきの街までの間は、夜はいつも焚き火をしていただろう?」



なぜか、ユリアの顔から大量の汗が流れていた。



「どうしたんだ?」


「いえっ、キルア様、焚き火は山の中ではあまりしないほうがいいんですよ」


「んっ、なんでだ? 真っ暗で不便じゃないか?」


「えーと、それはですね・・・。あっ、魔物、魔物が多いからです!」


「魔物が多いと焚き火をしてはいけないのか?」


「はい! 焚き火や火を出していると、魔物がそれはもうっ、たくさん寄ってくるんです!」



身を乗り出してユリアが力説してきた。



「そんなに魔物が寄ってくるのか?」


「はいっ、たくさん寄ってきますから危険ですよ」


「危険か・・・それなら仕方ないな」



魔物にあったことはないが、ユリアの話では人間を食べたりする生物だと教えられた。


人間の姿をした今の我も食われるかもしれないともユリアから教えられた。


魔物がどんなに強いか分からないが、力を失った我が勝てるか分からない。


魔物が襲ってきたら、ユリアに戦ってもらう以外は方法はない。


まったく、不便な体になったものだ。


黒竜であれば、他の生物など恐れる必要などなかったのに・・・。



明かりのない真っ暗な森でも黒竜の我は目を凝らせば昼間と同じように見ることが出来るが、ユリアの目は夜の暗闇の中では働かない。


つまり、我が寝ている間にユリアが魔物の接近に気がつかずに襲われるかもしれないのだ。


これから、安心して眠れない日々が続きそうだ。

今回は、キルアが目覚めてからすぐの話です。


また、次が書けたらすぐに更新しますね



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