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第一章 外伝 街に舞い降りた神様その2 △

ストーリー自体にあまり関係しないので外伝と表記することにしました。

―――― マリー ――――



キルア様を連れまわし終わる頃には、もう日も高くなっていてお昼前でした。


私はキルア様を食事に誘いました。


正直、断られると思っていました。


しかし、キルア様は飛び上がって喜んでくださいました。


私は、少し怖くなりました。


こんなに喜んでくれているのに、期待してくれているのに、あまりいいものが出せないからです。




家に着きました。




キルア様が食事を催促しました。


私は買い置きしていたライ麦パンと野菜だけしか入っていないシチューを差し出しました。


スラムの食事ではこれが限界です。


がっかりされると思いましたが、キルア様は喜んで、美味い美味いと、残さず食べてくれました。


特にシチューを気に入ったようで、一杯目を飲んでも、まだ欲しそうでした。


おかわりするか尋ねると喜んでお皿を差し出してきてくれました。




私は、最初。というか今まで、私はキルア様のことをお金持ちだからお金が要らないんだと思っていました。


そうでもないと何のために働いているのか分からないからです。


なんでも、もっているから、なんでもくれるのだと思っていました。


でも、パンやシチューを喜んで食べているキルア様を見るとそれが間違いだったことに気づきました。




私はキルア様がどういう人なのか興味が湧いて、尋ねました。






衝撃でした。





キルア様は、今まで、スラム街の私たちよりも貧しい生活をしていたからです。


生まれてから昨日までライ麦パンとスープしか食べたことが無いそうです。


しかもそれは、村にいた一日だけで、馬車での旅の間中ずっとライ麦パンと水だけを食べていたそうです。


私の目から自然と涙が出ていきました。病気が治って隣にいたお父さんも涙を流していました。


庶民よりも悪い生活をしていながら、神のような力を持っていながら、その力を人々のために、なにも求めずに、使う。


私は、本に載っていた慈愛の神ローザを思い浮かべました。


キルア様は慈愛の神のことを知らないようでした。


だから、私はスラム街で見つけた本を差し出しました。


キルア様に本を見せると、「読ませてくれ」と飛びついてきました。


私はすぐ本を渡しました。


キルア様は本を開くと食い入るように読み始めました。


私は、本が好きなんだなと思い差し上げることにしました。


キルア様は驚いてからすごく喜んでくれました。


しかも、頭まで優しく撫ぜてくれました。すごく嬉しかったです!


その後、私はキルア様を宿屋に送り届けました。


キルア様が宿屋に入るのをしっかり確認してから家に帰りました。


家では、お父さんがキルア様にお祈りを捧げていました。


私も隣に並びお祈りをします。


キルア様のおかげで、お父さんの病気は治りました。また手を繋ぐことが出来ます。


お父さんのためにと、楽にしようと、殺さないですみました。


私は、キルア様に会えてほんとうによかったです。


今までの暗い人生が明るい光に照らされました。




キルア様。 ありがとうございました!





しかし、キルア様は、次の日には、旅立ってしまわれるとのことでした。


なんでも、王都に向かうとの事でした。


私は行って欲しくなかったです。街にずっといて欲しかったです。


街の人たちも同じ気持ちでした。


別れが嫌で、街の大通りの壁際には人が溢れて壁のようになっていました。


キルア様の馬車に向かって、感謝を言葉を送ります。


私もその中の一人です。




キルア様の乗った馬車が街の出口に向かって進んでいきます。




私は・・・私が、気づいた頃には大声で叫んでいました。「行かないで」と。




それをかわきりに、歓声と感謝の言葉が、涙と引き止める言葉に変わりました。


馬車が止まり、領主のゴルドーがキルア様に向かって、すがるように馬車に近づき、拝んでいます。


すると、キルア様が荷台から飛び出し、空に向かって何かを書くように手を動かしていきました。




空に、何かが書かれていきます。




あれは、私がキルア様に渡した本に書かれていた模様でした。


慈愛の神の象徴とされる模様が街を覆うように空に書かれていました。


模様から光が降り注ぎ街を包み込みました。




温かい。すごく優しい光でした。




皆、降り注ぐ光に夢中になっている隙に、キルア様は馬車の荷台から大きな袋を領主の目の前に置き、キルア様は、領主に向かって、「この金は街のために使えと」と言い馬車に戻られてしまわれました。




キルア様の行いに領主は泣き崩れてしまいました。




キルア様の馬車はそのまま街の門をくぐり、グラールから旅立ってしまわれました。




キルア様は、あの方は、慈愛の神の化身ではなく、神様だったのです。


私たちの街を救うために現れた神様だったのです。


私も、街の人達も、馬車が去っていく姿に黙って祈りを捧げました。






あれから、二週間が経ちました。




街はいい方向に変わり始めました。



街には活気が戻り、中央広場や大通りには人が以前のように・・・いえっ、以前よりも賑わいを見せています。


街の人達から絶望の表情は消え、今は笑顔で溢れています。


キルア様の街を覆う光のおかげでベゼルリッターの毒が発病していた人間は完全にいなくなりました。



私のお父さんも今は元気に仕事をしています。


昔よりもよく笑うようになりました。


もちろん私も、キルア様に助けてもらった命を大切に幸せに生きるために、毎日楽しみながら笑顔で生きています。



それから、領主はキルア様に貰ったお金をきちんとスラムを無くすように使うために動いてくれています。


それに、キルア様の銅像も急いで作られ、街の中央広場に飾られています。


キルア様が手をかざしている姿です。





銅像の土台にこう書いてあります。





『対価を求めず 慈悲と慈愛の心で我々をお救いくださった


我々の神 キルア様にグラールの民は永遠の忠誠を誓います』





街の人々は必ず朝と夜にキルア様の像に祈りを捧げます。


私たちの神の無事を祈って、救っていただいた感謝の気持ちをめて、祈りを捧げます。





今度は、いつこのグラールを訪れてくれるのでしょう?




もう一度、キルア様のお姿を見て、お声を聞かせてもらいたいです。




今日もまた、キルア様の無事と感謝の祈りを捧げます。


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