第一章 外伝 街に舞い降りた神様その1 △
△=村人などを表してます。
―――― マリー ――――
私の街は、半年前に森の洞窟に住み着いた。ベゼルリッターという魔物が出す毒が蔓延しました。
発病したら、体に黒い模様が浮かび上がり、どんどん体力を奪い去り最後には死んでしまう病気で決して治らない病気でした。
しかも毒は、発病した人に触っただけでも移るので街のほとんどの人が病気になり、街からは、活気が消え。人は家に閉じこもるようになりました。
私のお父さんも三ヶ月前に発病しました。
発病したら死ぬ病気です。私はお父さんが弱って死んでいくのを待つだけになりました。
お父さんの病気はどんどん悪くなっていきました。
苦しそうなお父さんをただ見ていることしか出来ない私は、お父さんを病気の苦しみから救おうと楽にしてあげようと思い始めた矢先に。
街は一人の旅人に救われました。
黒い髪と金色の目をした青年でした。
マントに身を包み、手から不思議な光を放つ青年でした。
名前はキルア。キルア様です。
キルア様はお金や物を欲しがらずに、淡々と街の人達を治していきました。
身分が高い人にも、私たちのような身分の低いスラム街の人にも平等に治療してくれました。
私は、キルア様のことを最初は誤解していました。
「教会で病気の治療をお金も取らずに治してくれる人間が現れた」
私はそれを聞いたとき嘘だと思いました。
そんないい人がいるはずがない。
スラム街育ちの私にはそのことがよく分かっていました。
でも、お父さんがベッドで苦しんでいる姿を見ていると、いてもたってもいられなくなり、夜が遅くなっていましたが、私はお父さんを助けてもらうために、急いでその人のいる教会に向かいました。
しかし、教会についたときに見たものは、キルア様が神父様から大きな袋を貰っている姿でした。
私は、すぐに理解できました。
あの袋はお金だと。
何も貰わずに人を助けてくれる人はやっぱりいないのだと。
何かをして欲しいなら、何かを支払わなければならないことを。
私は一度諦めました。 諦めて帰ろうと教会から出ました。
でも、ベッドで苦しんでいるお父さんを思うと諦められませんでした。
また教会に戻ろうとしたときです。
キルア様が女の人を抱えて、大急ぎで教会から出て行きました。
私は急いで後をつけました。
キルア様が街で有名な宿屋に入っていきました。
たぶんここに泊まるんでしょう。
街の人たちは宿屋を囲むように集まっていましたが神父様の勧めで、キルア様を休ませるために解散することになりました。
私は、宿屋から人がいなくなるのを待ってから、灯りのついている窓に石を投げました。
窓が開いて黒髪と金色の目が顔を出しました。
私は必死に手を振って呼びかけました。
「降りてきてください」
必死に心の中で叫びます。声を出してしまえば他の人が来るかもしれなかったからです。
窓が閉じても必死に手を振りました。
そして、私の願いが通じて、キルア様が降りてきてくださいました。
私は、キルア様に必死で頼みました。
キルア様は快く願いを受け入れてくださいました。
キルア様を私の住んでいるスラム街に連れて行きます。
グラールのスラムは街で税金が払えなかったり、身寄りの無い子供が集まる掃き溜めのような場所です。
道にはゴミが捨てられ、悪臭がたちこめる最下層の人間の住処。
私は、キルア様が帰ってしまわないか不安で何度も振り返りました。
キルア様はこの悪臭が懐かしいと言いました。
キルア様の顔を見るかぎり、気遣いや冗談ではなく本当に懐かしがっているようでした。
しばらくして、家に着きました。
すぐに、お父さんをキルア様に診てもらいます。
キルア様はお父さんを少し診ただけで手から光を出しお父さんに浴びせていきます。
すると、奇跡が起きました。
治らないとされていた病気が治ったのです。
お父さんから黒い模様が消えて、苦しそうに息をしていたお父さんの呼吸も安らかになりました。
私は、三ヶ月ぶりにお父さんと触れ合えました。
ただ、見ていることしか出来なかったお父さんに私はまた触れ合うことが出来るようになりました。
私は、嬉しくなり涙を流してキルア様に感謝しました。
ポケットからお金を出してキルア様に差し出しました。
しかし、キルア様は受け取らずに対価を求めないとおっしゃいました。
私は生まれて初めて聖人と呼ばれる人間にあいました。
私の「他の人も治して」と言う図々しい願いにも答えてくれました。
私はスラム街や街中の病人のもとへキルア様を夜通しで連れまわしました。
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