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第一章3-8 豪華すぎるお見送り ◇

――――ユリアーナ――――



朝が来ました。


グラールから出発する朝が来ました。


私は荷馬車もキルア様の大金も宿屋にあったので宿屋で寝ました。


すごくいい部屋でした。たぶん一泊で金貨が必要になるほどです。


結局。キルア様はゴルドーさんの屋敷に泊まりました。


昨日は、ビジターさんに案内されながら旅に必要な物を揃えました。


かなりいい剣も手に入りましたし、食料や水。日用品なんかも充分手に入りました。


お金はまだ金貨30枚の袋とキルア様が貰った大きな袋に入ったお金があります。


というか、減っていません。


ビジターさんがキルア様の救世主様のお付と紹介してくださったら、皆さん店で一番高いものをくれました。


ボロボロだったマントも新品で上等な物を貰いました。


いよいよ私の稼いだ金貨の意味がなくなってきましたね。




荷馬車を走らせて、ゴルドーさんの屋敷に向かいます。


道の両脇に無数の街人が立ってこちらの様子を見ています。


キルア様の見送りでしょうね。


この街ではもうキルア様は神のような存在なんでしょう。


皆さん涙を流してこれからの別れを悲しんでいるようです。




ゴルドーさんの屋敷に着きました。


すでにキルア様は、門の前で待っていました。


徹夜で本を読んでいたんでしょう。


目の下にすごいクマを作って、目つきの悪さが増しています。



「お待たせしました。キルア様」


「うん。早く行こう」


「はい」




キルアが荷馬車の荷台に乗り込むのを確認してから荷馬車を走らせる。



街の大通りは脇に人垣が出来ていて、道には、私たちの荷馬車しかありません。


完全にキルア様専用の道になってます。


街の皆さんが涙を流しながら大声でお礼を言ってきます。



「すごい人気ですね。キルア様」


「知らない。もう当分、人間に会いたくない。早く休みたい」



キルア様すごく迷惑そうです。それにかなり疲れているようです。


あっ、門が見えてきました。



門にはこの街で偉い人たちが列を作っていました。


領主のゴルドーさんをはじめギルドマスターのヨーゼフさん。教会の神父様まで。



「キルア様っ! 行かないでください!」



誰かのその言葉をかわきりに街中が涙に包まれる。



「キルア様ぁ・・・あなたが、あなたがいなくなれば、私たちはどうやって生きていけばいいのですかぁ!」



ゴルドーさんが荷馬車の荷台にいるキルア様にすがるように言いました。


キルア様。すごく不機嫌です・・・すごくイライラしてます。やばいです。



「キ、キルア様っ!」


「・・・」



キルア様が荷台から飛び出してしまいました! 


な、なにをする気なんでしょう・・・。


キルア様が空に向かって何かを書くように手を動かしています。


なにを・・・?


空に街を包み込むように魔方陣っ?


大きな魔方陣が描かれました!


キルア様は魔法が使えたんですか!?




キルアが描いた魔法陣が光を放ち、街を包み込む。




「これで、毒は完全に消えたはずだ。もう俺は必要ないな」


「えっ、あっ・・・?」



街から無く声もキルア様を呼び止める声も止み、ポカンと皆、口を開けています。


当然です。キルア様・・・あなたなにしてくれたんですか・・・。



「あとこれも、いらん。我は対価を貰わない契約だ」


「な・・・」



ああっキルア様がお金がたくさん入った袋を荷馬車から出してしまわれました。


ゴルドーさんや街の人たちも困惑しています。



「でも、救世主様・・・」


「何度も言うが俺は救世主様じゃなくてキルアだ」


「キルア様・・・」


「この金は街のために使え。スラム街とかにな」


「・・・」



ゴルドーさんもう泣き崩れてます・・・。



キルア様が倒れこむようにして荷台に戻ってきました。



「キルア様・・・」


「ユリア。今すぐ出せ。今すぐに。だ」


「は、はい。わかりました!」



ここにいてはマズイ・・・今すぐ街を出ないとマズイです!




ユリアーナは馬を全力で走らせ、グラールから離れていく。


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