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プロローグ1-3 死の谷エドランタ ◇

――――ユリアーナ――――



王宮を出発してから一ヶ月が過ぎました。


たった今、死の谷に一番近い村。グルフェル村に着きました。


特産品は死の谷で取れる宝石です。正直、気になりはしますが今は黒竜が優先です。


もうすぐ、日も暮れますし宿屋を探して明日の朝から死の谷へ向うことにします。


しばらく村を探索すると、宿屋の看板を掲げたほかの家より二周りは大きい家を発見しました。


おそらく宿屋でしょう。扉を開け中に入る。



「い、いらっしゃい! 見かけない顔だね! 何泊するんだい? うちは一部屋一晩、夕食付きで銀貨一枚だよ」


「とりあえず、一泊頼みます」



さすが、宿屋の主人といったところだろう。今の私は、全身鎧で背中には大剣を見て表情を強張らせたのは一瞬だった。すぐに営業スマイルを浮かべ部屋を勧めてくる。


感心しながら銀貨を一枚差し出しだす。



「まいど! 二階の左の角部屋が空いてるからそこ使ってくれ、これが鍵だ。出て行くときはきちんと返してくれよ。あと、夕食はあそこにいる俺の女房に言ってくれ」


「ありがとうございます」



短くお礼を言ってから、部屋に向います。


うん田舎にしてはいい部屋です。小さな机と椅子。そしてシングルベッド。タンスまでついて銀貨一枚は破格です。



「ふーう」



ゆっくりと、肩から力を抜く。久しぶりの宿屋だ。今までは宿屋が無かったから馬車の荷台で魔物や山賊を警戒しながら寝起きしていた。


なにしろ一人旅だ。強いといっても一人では休むことも出来ない。


それに食料も残り少なくなっていたからちょうどよかった。

久々の料理です。


身支度を整えて一階に下りる。


すぐに、宿屋の奥さんに夕食を用意してもらった。とてもおいしかったです。


宿屋は、村人が宴会を行っています。奥さんに聞くと、毎回、仕事終わりにここに飲みに来るそうです。


一人の酔っ払いが近づいてきました。まあ、今は鎧を脱いで大剣も部屋に置いていますから声をかけやすかったのでしょう。



「よお、ねぇちゃん美人だな。見かけない顔だし? どこから来たんだぁ?」


「王都から来ました」



少し驚いたようです。



「へぇ、すげな! ねぇちゃん。なんだ、宝石の買い付けにでもきたのかい?」



まあ、そう思うでしょうね。ここは死の谷と恐れられている毒の谷だ。


ここに来る、よそ者のは宝石を買い付けに来た行商人ぐらいだろう。



「いえ、黒竜を狩に来ました」



酔っ払いの男は固まりました。


本当のことを言っただけなのに、どうしたのでしょう?



「やめときな、ねぇさん。あんたは綺麗で若いんだから命は粗末にしてはいけない」



酔いの醒めた真剣な顔で諭してきます。いい人だったようです。



「ですが、黒竜の体液が必要なんです」


「黒竜以前の問題だ! 死の谷は奥に行くにつれて毒性が強くなるんだ。黒竜はその谷の最深部の大洞窟にいるんだぞ!!つくまえに死んでしまう」



これは、いいことを聞いた。黒竜は谷の最深部の大洞窟にいるらしい。



「大洞窟ですね。ありがとうございます」


「おっ、おい!!」



村人にお礼を言ってから、睡眠をとりに二階にもどる。




愛用の大剣。『竜殺しの魔剣ドラゴンスレイヤー』の手入れをしながら考える。


明日、私は死ぬかもしれません・・・。


いや・・・死ねないんでした・・・。


私が死んだら王国が滅びるかも知れませんし、お世話になった王族の方々の命をお救いすることも出来ません。


私が死ぬことになっても、黒竜の体液を手に入れなければなりません。


地獄から救い出してくれた王族を今度は自分が救えるかもしれません。


明日は、毒の谷にもぐるのです。


明日は、黒竜と戦うのです。


明日は、黒竜を倒すのです。


もう、眠ることにします。

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