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プロローグ1-2 ユリアーナの覚悟 ◇

――――ユリアーナ――――



私の名前はユリアーナ・セイール。18歳


アルマース王国一、二番の強さを誇る女戦士です。


もともとは、孤児の子供ですが、15歳のとき、初めて戦争に参加させられたときに国王様に才能を見出され、王宮仕えとなりました。


それから2年。私の人生の中でも最高に幸せな時間でした。


孤児で戦闘しか才能の無いこの私にしっかりした戦闘訓練だけでなく礼儀作法や読み書きなどの教育を受けさせてくださいました。


そして、衣食住まで用意してくれただけではなく、王家の方々は私を本当の家族のように扱ってくださいました。




しかし、そんな幸せは永くは続きませんでした。


今の王家は、呪いと言っても過言ではない現象が起こっています。


王家には、国王と王妃、そして三人の姉妹姫がいます。


まずは、三姉妹の長女のエレノア様が事故にあいました。


エレノア様は、姫でありながら武勇と戦略に優れた猛将で騎士団に所属していました。


エレノア様は、腰まで届く真っ赤な赤髪と顔の半分を覆う眼帯が特徴の姫です。


顔の半分が眼帯で覆うわれているのに関わらず、そのお顔は美しさを欠片も失ってなどもいません。


美しくも力強く、それでいて女性らしい凹凸や曲線を描いた肢体は私の憧れです。




騎士団は、王から近隣の魔物から村を守るように命じられ、エレノア様は、森の魔物退治の際に一人で独断専行したらしいです。


エレノア様が事故にあった時。反対側の村の魔物退治をしていたのでよくわかりませんが、エレノア様の護衛の騎士たちは、「エレノア様が涙を浮かべながら魔物を切り刻んでいった」と言っていました。


おそらく、母親の王妃の体調が優れないためでしょう。


王妃は、第三子のノアール姫を出産された後、病気を患ったそうです。


その病気が年を重ねるごとに悪くなっていくので、王家はどんどん暗くなっていきました。


どんな公明な医師や奇跡をおこす巫女でも治すことも進行を遅らせることも出来ませんでした。


最後の巫女にも治療も延命も出来ないと言われました。


そんな、死亡宣告をもらったその日に魔物が大量発生したという情報がはいりました。


当然、騎士団所属のエレノアは戦場に赴きました。


そして、事故にあいました・・・。


それも打ち所が悪く、女性の機能を全て失ってしまったそうです。


婚姻を約束していた王子は手のひらを返したように態度をかえます。


事故にあうまではしつこく付きまとっていた王子の目はまるでゴミを見るかのような眼差しに変わりました。


王子は、容姿と利益に惹かれただけのただのクズ男だったのです。



「子供も残せない欠陥の姫と結婚などしたくない」



王宮の舞踏会で酔った王子はそう言っていました。


正直、その場で切り裂きたかったです。嬲り殺しにしてしまいたかったですが、気丈に振舞う王家の方々にその一歩を踏み出すことが出来ませんでした。


後日正式にこちらから婚姻を破棄したそうです。あんなクズ男と結婚しないでよくなったのは幸運と呼べるのでしょう。


しかし、エレノア様は変わられてしまいました。女のすべてを捨て姫であることを捨て、武のみに生きるようになりました。立ち振る舞いもまるで男性のようになり、見ているだけで痛々しいです。




それから、一年後―――またもや悲劇が起こります。


今度は16歳のレイティア様が重い病気にかかりました。


発症してからすぐどんどん容態が悪くなり、もはや一人ではベッドから起き上がれなくなりました。


王家はどんどん衰退していきます。


治療にかかる費用でかなりの税金を消費してしまい、政策がまわらなくなってきたのです。




しかも、王家には、血族問題も浮上しました。


王妃も病気。三人の姫も、長女は子供の産めない体。次女は重い病気。三女にいたってはまだ初潮もきていない10歳の少女です。


国王も度重なる心労で不能になったと聞く。


私は王国に、王族たちに恩義を返したかった・・・。

武勇や魔法が優れていれば王族を守れると思っていた・・・。


しかし、そうではなかった・・・。


私の力など役に立たなかった・・・。




王宮の医師が私に告げてきた。




王妃は数年は生きていられるだろうが、次女のレイティア姫は一年も生きれないそうだ・・・。


私の体から急に力が抜ける・・・。目の前が暗闇に覆われた・・・。


どうすればいいんだ・・・! どうすれば救えるんだ・・・!!



「一つだけ・・・。たった一つだけ王族を救う方法があります・・・」



医師は、おもおもしく言葉を紡いだ。



「それはどうすればいいのですか! 教えてください!!」



私は医師にすがるようにお願いした。



「死の谷と言われるエドランタに住まう伝説の黒竜の体液を飲めば、王族の病気は治るでしょう」


「死の谷・・・。黒竜・・・。」


「そうです。黒竜にとって毒は空気のようなものです。毒をものともしない黒竜の体液を飲めばどんな病や怪我も治ると王国の秘伝の薬品書に記されています」


「黒竜を倒せばいいんですね・・・」



暗黒の闇から一筋の光が差し込んだ。



「む、無理です。黒竜の住む死の谷は猛毒のガスが一年中出ているんですよ! 一息でも吸えば肺が腐るほどの猛毒が・・・!」



医師は、あわてながら説明してくるが私には死の危険など関係が無かった。


もとより王家のために使うと決めた命。


王家を救うためなら喜んで死のう!



「それに、死の谷を越えても黒竜がいるんですよ! 黒竜は大昔に存在した竜の中でも最強の伝説の生き物なんですよ!!」


「関係ない!王族を救えるのなら伝説の黒竜など恐れるに足りない!!」



必死に止めようとする医師を無視して、死の谷へ向う。


必ず黒竜の体液を持ってきます! それまでどうか生きていてください!!


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