表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/62

第一章1-2 目覚めと交渉 ◆

――――キルア――――



ここは、どこだ?




目覚めたら人間のベッドの上に寝ていた。


周りを見ると、ベットに机、椅子にタンスとやはり人間の部屋だ。




ガチャと部屋のドアが開く。




「目覚められましたか?」



入ってきたのは勇者の娘だった。状況からして拉致されたのだろう。


意識を失う直前に見た泣き顔から今は無表情に変わっている。



「ここは、どこだ?」


「ここは、村の宿屋です。少々、強引になりましたが王都に行って貰うことにしました」


しましたって、決定なのか・・・?


「どうしてもあなたの力が必要なんです。王都に無理やり連れて行きます」


「嫌だと言ったらどうするつもりだ?」


「手足をもぎ取ってでも連れて行きます」


「はっ、お、まえっ!? 我を脅迫するのか!?」


「はい。そうです」



この娘の本気だ。本気で拒否したら手足をもぎ取るつもりだ・・・。



「お前を助けてやった我を脅迫するのか・・・」


「はい」



やはり人間は卑怯な生き物だっ、助けたのは間違いだった・・・。



「お前は恩を仇で返すのか?」


「王都に救いたい人がいるのです。もともとそのためにあなたと戦いました。あなたを連れて帰らなかったら生き残った意味がありません」


「我には関係ないと思うが? なぜ我が好き好んで人間の国に出向かねばならんのだ? 我にとって利益よりも危険のほうが大きいではないか? というか危険しかないではないか!」


「しかし、私はそれでもあなたに王都に来て欲しいんです」


「力の大半を失っておるのだそ! しかも、漆黒の鱗もないんだぞ!! それに黒竜がっ! 誇り高い黒竜が人間のお前に従えと言うのか!!?」



余りの怒りに手に力が入りブルブルと震える。本来の姿だったらブレスを放っていただろう。



「違います。従うのは私です」



ん、この娘何といった?



「あなたが、王都に来てくださるのなら、私はこれから生命の全てをあなたに捧げます」


「なんだ? だったら、お前が救いたいという人間を助けると契約すればお前をこれからどう扱ってもよいのか?」


「はい。私はあなたに受けた大恩を仇で返しているのです。それに王都にいる人間を救うと契約してくださいましたら、私をどう扱おうとあなたの自由です」


「我は貴様を殺すかも知れんぞ・・・!?」


「はい。もとより救っていただいた命です。契約を守ってくださるのでしたら好きに殺してください」




こいつ・・・!! やはり変だ。迷い無く殺されること了承した・・・。


戦うこいつは美しかった。美しいこいつがなぜ他人のためになぜここまでするかと興味が湧いた。


両親が死んでから数百年ぶりの会話だったこともあるが、竜の寿命は1万年以上あるからだ。竜は基本的に退屈なのだ。


この娘が死に掛けになりながらも我に挑んできた理由になった人間に会ってみたいと思った。



「今の我は力の大半を失っている」


「知っています」


「我は戦い方を失っている」


「私が戦います」


「我は世界を知らない」


「私が教えましょう」



うむ、どうしたものか・・・。


こやつほどの力があれば、王都に簡単に行けるやも知れん・・・。


正直、外の世界には興味があった。


人間にも興味が湧いた。


どちらにしろ王都に連れて行かれるだろう。


しかも、手足を切って無理やり・・・。




うむ・・・どちらにしろ逃げられないのならばこの者を召使いにするほうがよいな。


この者は、我に挑んできたほどの人間だ。我の召使いに相応しいだろう。



「わかった。救うと契約しよう」


「本当ですかっ!?」



いきなり無表情が消えた。やっぱり変な娘だ。



「ただしお前はこれから我の所有物だ」


「はい! かまいません! 私はあなたの所有物です!」



よほど嬉しいのであろう飛び上がって喜んでいる。


やはりこの者は美しい。宙に舞う長いきらきら光る金髪が彼女を妖精のように映す。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ