漆拾弐.驚きの白さ
雪は着替えと湯を持ってきていた。湯は血で汚れたところを洗うためのもので、さっきからずっと気持ち悪かったのでありがたかった。
俺と雪が一緒に部屋に入ると、雪は血で汚れた部屋を片付けて湯の準備を始めた。俺は血で汚れた小袖を脱ぎ、ぐしょぐしょになったショーツも脱いだ。これはエロい、じゃなくて、グロい。
雪「服は洗っておきますので」
俺「これ、綺麗に落ちる?」
雪「ちょっと難しいかと。ですのでこれからは生理専用に使います」
俺「なるほど」
(今度、洗濯の魔法についても研究しておこう)
雪「そちらのショーツというのもいただけますか?」
俺「あ、これはいいから」
そう言って、俺は部屋の墨に置いてあった例の箱に血でぐしょぐしょになったショーツを触れさせた。するとショーツは光を伴って消え、ショーツをかたどった紙切れに変わった。それを再び箱に触れさせると、また光を伴って消えて汚れの落ちたショーツが現れた。
(いつ見てもチートだよなー)
2回箱に触れるだけで驚きの白さになるなら世の消費財メーカーに生き残る術はない。現代に天照が降臨しなくて本当によかったと思う。主に失業率的な意味で。
雪「たっ、竹姫さま」
俺「ん? どうしたの?」
雪「竹姫さまは穢れを浄化できるのですか?」
俺「毛枯れ?」
雪は目を丸くして、俺が握っているショーツを見つめていた。客観的に言うと、裸の美少女が握るショーツを和服の美少女が凝視していた、ということになる。ただし、このシーンを客観的に説明する必要は全くない。
俺「あ、これ? これはこうやって再生すると汚れが全部落ちるんだよ」
雪「それはどんなものでもできるのですか?」
俺「ごめんね。これができるのは特別な服だけなんだよ」
多分、雪は洗濯物を綺麗に洗いたいと思っているんだ。やっぱり洗濯の魔法は大切だな。
俺「あ、でもね、床に落ちた血なら綺麗にできるよ」
そう言うと、俺は居住結界に指示を与えた。
俺『居室、清掃』
そう唱えるやいなや、見る見るうちに床に残っていた血の跡が消えていった。寝具として利用していた畳の上に着いたシミまで消えて、部屋の中は瞬く間に全く元通りの綺麗な部屋になってしまった。
雪「竹姫さま…」
雪は何やらとても驚いた様子で床にへたり込んでしまった。
俺「だ、大丈夫、雪?」
雪「大丈夫です。竹姫さまはやっぱりすごいお方なんですね」
俺「はい?」
雪「…、とりあえず、お召し物を先に。お話は後にいたしましょう」
前回更新時点で累計UUが3万を超えていたようです。皆様の日頃のご愛顧、心より感謝します。これからもよろしくお願いします。