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伍拾壱.人間みたいですよ?

 俺『はあぁぁぁぁ?』


 細かいことは後でって言ってた。確かに天照は細かいことは後でって言ったはずだ。


 俺『後っていつのことだーーーー!!!』


 しまった。あの残念女神を信じた俺がバカだった。これから何をされるのか分からないが、予備知識もないまま何かとんでもないことが起きることだけは覚悟しておいたほうがいいに違いない。


 俺『一体何が…。 っ!!』


 ふと気づくといつの間にか俺の服装が変わっていた。狩衣を着ていたはずが、淡い桜色の袿に透き通るように薄い金色の衣を纏っている。その上なんだか胸のあたりが重いような…。


 俺『なんじゃこりゃぁあ』


 巨乳です。


 おかしい。俺の胸は小学校低学年にふさわしい慎ましやかなものだったはずだ。しかし、これはどう見てもそれとは大きくベクトルを異にするものだ。例えるならメロン。スイカのように水で割増された偽物ではない。外見だけでなく中身まで本物であることが証明された桐箱入りのメロンだ。


 (なんでこんなものが俺の胸に)


 袿の上までも主張するその存在感に好奇心を刺激されて、ちょっとつついてみた。うん。なんか妙に柔らかい。基本的には脂肪の塊であるそれは、中に骨も筋肉も入っていないため、水を貯めたビニール袋のように形を変えるのだ。しかし、張りのある皮膚が持つ弾力は、ビニール袋とは一線を画す触り心地を生み出している。


 ふにふに。


 ふにふにふに。


 男だった頃なら鼻血が出そうな状況だが、身体が女になってしまってさらに子供になってしまったため、巨乳を触ってもちっとも身体は反応しない。なんか悪いことをしているみたいでドキドキするが、どれだけ触っていても鼻血が出ることはなさそうだ。


 誰かの声(お姉さまー。どこですかー。お姉さまー)


 ビクゥゥッ!


 俺はふと頭に響いた声に我に返った。さっき微かに聞こえた声だ。今はだいぶ近くから聞こえる。


 誰かの声(お姉さま。こんなところに!)


 声はいよいよ近くまで来て、俺は声のする方向に顔を向けた。そこには濃い紫の直衣を着た背の高い美形の男性が淡い光に包まれて宙に浮いていた。


 男性(さあ、早く帰りましょう。明日は夏至なんですから、主役のお姉さまがいらっしゃらなくてどうするんですか)


 あれ? この人、口動かさないでしゃべってるよ? てか、光ってるし、浮いてるよ?


 俺「誰?」

 男性(何をバカなことをおっしゃってるんですか。行きますよ)


 美形の男性は俺の手をつかむと空中に浮き上がった。


 俺「うわっ。ちょ、ちょ、ちょ」

 男性(お姉さま、さっきからなぜ口で話などしていらっしゃるのですか? 人間みたいですよ)

 俺「は?」


 こいつ人間じゃなかったのかっ、…って見れば分かるか…。浮いてるしね。

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