参百伍拾陸.再転生
と突然、月☆読が横向きに吹っ飛んで山肌に弾丸のように突っ込んでいった。
スサノオ(月詠、お前はまだそんなことをしているのか)
俺「スサノオ、どうして?」
月☆読を吹き飛ばしたのは根の国にいるはずのスサノオだった。
雨(はぁはぁ。……間に……合った)
スサノオ(大国主。月☆読は俺が引き受けた。お前は自分の仕事をやれ)
随分離れたところで息を切らして倒れている雨を見つけて理解した。雨は逃げたんじゃなくて、根の国まで行ってスサノオを呼んできたのだ。
黄泉比良坂の道のりはそんなに短いものではなかったはずなのにこのタイミングでスサノオが現れたということは、相当急いで下ったのだろう。ちょっと空を飛ぶだけでもひぃひぃ言っているのに無理をしやがって。
大国主(天照さま、かぐや姫さん、雪さん、今から転生を行います。こちらに集まってください)
大国主に促され、俺たちは祭壇の近くへと集まった。
大国主(目をつむってください。行きます)
目をつむると、瞼の内側からでもわかるほどの光に包まれ、上下左右の感覚がなくなったと思ったら、そのまま意識を失った。
目が覚めると、そこは見覚えのある机だった。
デスクライトはついたままだったが、窓の外はもう明るくなっていた。
顔の下敷きになっていた教科書はちょうど竹取物語のページを開いていた。
俺「夢……」
トントン
ノックする音に振り返ると、ドアの向こうから誰かが呼ぶ声が聞こえた。
?「お姉さま、起きてらっしゃいますか?」
俺「う、うん」
声の響きになつかしさを感じて、状況が飲み込めないまま曖昧に返事をすると、ドアがすっと音もなく開いた。
俺「……雪」
雪「姫さま、ご無事で何よりです」
俺「雪も、無事なんだね」
雪「はい」
俺と雪は正面からしっかり抱き合って、再開を確かめ合った。
俺「そう言えば、天照は?」
雪「やっほー、姫ちゃん」
雪「ひゃっ、び、びっくりした」
雪「雪ちゃんも、はろー」
雪「いきなり私の口でしゃべらないでください。びっくりするじゃないですか」
雪「あ、そうだね。ごめんねー」
いきなり雪が一人漫才をやり始めたので驚いたが、何が起きているのかはすぐに分かった。
俺「天照も無事だったんだね」
天照「うん。ありがとう」
よかった。3人とも無事に現代に戻って来れたんだ。
俺「ところでさ、天照、さっきから体に違和感があるんだけど」
天照「あ、それなんだけどね、姫ちゃんのもともとの男の子の体は、時間転移魔法の生贄になっちゃったみたいだから、代わりにかぐや姫の時の体を使うことになったみたいだよ」
俺「それ、聞いてないよーー!!!」
転生!かぐや姫 【完】
次回はあとがきです。