参百伍拾参.食
細かく震える雪の手に包むように俺の手を重ねて、不安を和らげられるように微笑んでみた。
俺「何があっても、私が守るわ」
雪「はい」
そして、俺と雪がしばらく無言で見つめ合っていると、雪の後ろからちらちらと何かが主張するように、体の一部を振ってアピールしてきた。
天照『あたしの番は?』
俺「……わかったわ。こっちにおいで」
ぴょんぴょんと寄ってきた天照の両手をしっかり握ってあげると、天照は満足げに微笑んだ。
雨(ご主人様)
俺「却下よ」
雨(なんで!? 僕、まだご褒美もらってない)
そう言えば、雨がちゃんと仕事したらご褒美にハグしてあげるって言ったんだったっけ。
大国主(準備完了です)
俺「残念。時間切れね」
雨(えええええええええええっ!!!!!!)
雨が究極のOTZを見せているのを尻目に、俺たちは大国主の指示に従って所定の位置についた。
と、そこでふと違和感を感じた。
俺「あれ、なんか暗くない?」
今日は十五夜の満月の夜なので、夜でも明るいはずなんだけれど、そういえばさっきから妙に暗いような気がする。雲でも出てきたのかな?
と空を見て、気が付いた。
雪「月が……」
雪も俺と同時に異変に気づいたようで、空を見上げて固まっていた。
そこには、本来あるべき満月がなくなっていたのだ。
俺「月食だわ」