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参百伍拾弐.九尾

 俺「墨、後ろ向いてみて」


 怪訝な顔で墨がゆっくりと後ろを向くと、可愛いお尻から生えている魅惑的なものが徐々に姿を現した。


 俺「これは……、確かに立派な大人かも」

 天照『でしょ』

 俺「それに、素晴らしいしっぽだわ」


 そこにあったのは元々あった短めのしっぽではなく、豊かな9本のしっぽだった。


 天照『九尾の猫はものすごく長生きした猫だけがなれるの。だから、すっごく大人なんだよ』

 俺「それは、多分、猫又と九尾の狐を混同してると思う」


 まあ、猫又はしっぽが2本だから、9本もあったらもっとずっと長生きしてると言えなくはないとは思うけど。


 雨(がっかりだよ!)

 俺「あなたは黙ってなさい」


 雨が全身をわななかせて抗議しているが、どうせ話を聞いたところでおっぱいとしか言わないので無視していい。


 天照『あと、ついでに九尾にふさわしい神格も与えておいたから』

 墨「ありがとうございます」


 墨はしっぽが増えたことを純粋に喜んでいるようだ。大人っぽくというリクエストにこの回答は正直どうなのだろうと思うが、本人が納得しているのならいいか。


 俺「あれ、墨が神格を持ったってことは、雨の代わりに墨が全部仕事しちゃえばいいんじゃない?」

 雨(え゛?)

 武甕槌(それもそうだ。墨、これからは天児屋の分も頑張ってくれ)

 雨(ええーっ)

 俺「良かったね、雨。またニートに戻れるよ」

 雨(そんな。やっとちょっとだけ仕事ができるようになってきたのに)


 意外なことに、雨が仕事ができなくなるといって落ち込んでいた。前までは、仕事をしなくてもいいと言ったら有頂天になって喜んでいたと思うのに。


 墨「雨さま、何を言っているんですか。私が神格を得たって、雨さまは雨さまです。仕事はいくらでもあるんですから、きりきり働いてくださいね」

 雨(は、はい)

 墨「武甕槌さまも、雨さまをあまりいじめないでください。天照さまがいなくなったら武甕槌さまは高天原に戻るんですから、市杵島姫さまたちが助けてくれても私一人では手に負えません」

 武甕槌(すまぬ)


 おお、墨が武甕槌に頭を下げさせた。ということは、実は墨のやつ、現時点で地上最強なんじゃね? 末恐ろしいな。


 と、墨のことばかり気にしていたが、ふと雪の口数が少ないことに気づいて雪の姿を探した。


 俺「雪、大丈夫?」

 雪「不安がないといえば嘘になりますが、姫さまのことを信頼していますので、平気です」


 少し離れたところにいた雪に近づいて声をかけてみると、雪は落ち着いた声で答えた。


 今からでもやめてもいいよ、と思わず言ってしまいそうになったが、その言葉はどうにか飲み込んだ。ここまで来て覚悟も終えている雪にそれを言うのは逆に責任を逃れようとしているだけのような気がしたのだ。

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