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参百肆拾伍.人形作り

 俺「それにはいい考えがあるんです」


 そう言って、俺は懐から紙を一枚取り出した。


 俺「これは『神紙かみかみ』と言います。これを使って人型を作ると、人間みたいに動く人形になるんですよ」

 天照『あたしが作ったんだからね!』


 天照はそう言ってちょっと自慢げに空中をふわふわ浮いていた。


 ところでこの神紙、覚えている人は覚えているであろう、昔、当時の中納言の屋敷に行ったときに亀を作って置いてきた紙だ。亀が作れるなら人形だって作れるのだ。


 俺「この紙で作った人形をまるで中宮さまが出産したみたいにお腹から出して、後は天照に任せて帝にちょっと強めの暗示をかけてもらおうと思うんです」

 中宮「分かりました。あ、でも、かぐや姫さまはどうするんですか?」

 俺「今回は私が目立っちゃうとよくないので、こっそり変装して産婆の真似をしていようかなと思いますわ」


 ここで俺の存在が強調されちゃうと、赤ちゃんの存在が薄れちゃうからね。


 俺「残りの問題は、人型の顔なんですけど、これは私が考えるより中宮さまにお願いしたほうがいいかなと」

 中宮「私ですか?」

 俺「そうですわ。だって、中宮さまのお子様ですから」

 中宮「私にできるでしょうか……」

 俺「大丈夫です。強くイメージを持って描いてあげれば、自然にそのイメージが投射されます。上手下手ではありませんわ」

 中宮「分かりました。やってみます」


 中宮が力強くうなずいたのを見て、俺は神紙を折って人型を作り始めた。


 光り輝く玉の皇子みこ。生まれた時から立って歩けるスーパー赤ちゃん。


 強いイメージを込めて人型を折ってから、筆に墨をつけて中宮に渡した。


 中宮はそれを受け取って、緊張した面持ちで人型に顔を描いて心を込めていく。


 中宮「……できました」


 中宮がそう言うと、人型からぱっと光があふれ出て、気づいた時には目の覚めるほど可愛らしい赤ちゃんへと変化していた。


 天照『よーし。じゃあ、とっととやっちゃおー』

 俺「あ、ちょっと待って。その前に服を着替えなきゃ」


 平安時代の出産は真っ白な服を着てすると決まっているのだ。今、着ているようなきれいな色の服では出産をしているようには見えない。


 中宮「でも、私、お産用の服なんてここには持ち合わせてないですわ」

 天照『任せて!』


 天照がそう言って両手を空にふわりと掲げると、白い雪のような何かが俺たちの上に降り注いであっという間に服が真っ白になった。


 いつもと比べて随分簡単だが、お産用の白い服には特に細かいしきたりがあるわけではないので、今着ている服を真っ白にしてやるだけでも十分なのだ。

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