参百肆拾壱.愛の痛み
俺『そんなことより、一つお願いがあるんだけど』
天照『ひどいっ。女の子が勇気を出して誘ってるのに無視するなんて』
俺『それはいいから、一つお願いがあるんだけど』
天照『姫ちゃんは女の子の気持ちが分かってないよ!』
俺『誰かのせいで体は女の子にされちゃったんだけどね』
天照『ひどいやつがいるもんだね!!』
平常運転に戻ったら戻ったでなんか面倒くさくなってきた。あれとこれの中間くらいになってくれるといいのに。
俺『いい加減に人の話を聞け』
天照『嫌! まだ話し足りない』
俺『えーーっ』
天照『そう言えば、最近新作の魔法を作ったんだけどね』
俺『そんな話はどうでもいい』
天照『毛虫に可愛い目玉がつけられるんだよ』
俺『逆にキモイよっ』
天照『「虫に目を付ける姫君」略して「虫目付る姫君」 ぷぷぷっ』
俺『やかましい』
誰か助けて!
俺『とにかくまず俺の話を聞け。後でいくらでも構ってやるから』
天照『いくらでもなんて言って本当にいいの?』
俺『いいよ。どうせ現代に行ったらいくらでも時間はあるんだから』
天照『そんなこと言って、後悔しない?』
俺『しないよっ。……いや、するかも』
このテンションで話しまくられてたら命が縮むんじゃないじゃないか? って、命を削って会話するってどんなだよ!
天照『そういえば、姫ちゃんは何でここに来たんだっけ?』
俺『だから、さっきからその話をしようと……』
天照『あ、もしかしてすせり先生にあたしと姫ちゃんの本を書いてもらう件?』
俺『知らないよっ。やめてよ、そんなの!!』
すせり姫はBL専門じゃなかったのかっ。
天照『それがね、最初はあんまり乗り気じゃなかったんだけど、生やしてもいいよって言ったら俄然やる気になって』
俺『何をどこに! ……って、言うなっ。それ以上口に出さなくていいから』
天照『姫ちゃん、それ以上お口に……』
俺『やめろ』
天照がやばいことを口にしようとしたので、慌てて後頭部をどついてやったら、勢い余って頭を床にめり込ませるようにぶつけて倒れた。
天照『ぶへっ』
ガンッ メキッ!
天照『……痛い。これが愛の痛み』
俺『違う。いいからそろそろ人の話を聞け』
天照『仕方ないなぁ。じゃあ、今日だけだよ』
俺『なんでそんなに偉そうなんだ、お前は』
天照『だって、天照大御神だから』
俺『もうすぐそうじゃなくなるけどな』
天照『最後の一瞬まで余すところなく権力を濫用するのじゃ』
俺『やめなさい』
天照『まずは、姫ちゃんを手籠めにするところから』
俺『やめろ』
俺は調子に乗った天照の後頭部を再び力いっぱいどついた。
天照『ぶへっ』
ガンッ メキッ!
ああ、もう全く話が進まない。