参百卅漆.夜の遊び
天照『あ、姫ちゃん、おはー』
俺『おはーって時間じゃないし』
天照『細かいことは気にしない』
息も切らさず地上に下りた天照は相変わらずのハイテンションで迫ってきた。前にキスの件で気まずくなったことなんてもう忘れているようだ。
だけど、経験上、見た目でそう見えなくても何か心に秘めている可能性が十分にあるやつだから気を付けないと。
月☆読(お姉……さま……)
結局途中で振り離されていた月☆読も、ようやく追いついてきた。
天照『ねえ、姫ちゃん。今日は何をしたいの?』
俺『そうなんだよね。どうしようか?』
天照が意を汲んで月☆読を抑えてくれるといいんだけど。と考えて、それをどうやって説明したものかとはたと考えた。
天照『じゃあさ、じゃあさ、こんなのはどう? せっかく神社にいるんだから、境内の隅のほうでご神木に上体を預けてこんな恰好をして』
俺『ちょっと待て。お前は一体全体、何を言おうとしているんだ!』
天照『え、もちろん、2人でできる面白い遊びだけど』
俺『どう考えても違う……、いや、遊びには違いないかもしれないけど、そういうことじゃなくて、とにかく、もう夜遅いから外の遊びはやめた方がいいと思う』
天照のペースに引き込まれちゃいけない。とりあえず、今は月☆読から姿を隠して話をしないといけないんだった。
天照『えー。あたしは夜しか遊べないのに、夜遊んじゃいけなかったらいつ遊ぶの?』
確かに、天照は太陽の神様だから、天照が地上に下りてきているということは空に太陽がないということだ。必然的に天照は夜遊び以外の遊びはできないことになる。
俺『いいじゃないか。どうせそのうち……』
天照『姫ちゃん、姫ちゃん!』
俺『あ……』
やば。どうせそのうち昼間でも遊べるようになるとか言いそうになってた。月☆読に聞かれたらどうするつもりだったんだ。天照に注意されるとか終わってるな。
月☆読(かぐや姫さん)
てか、月☆読、すぐそばにいたし!
俺『足音をさせずに背後から近寄るなっ』
月☆読(あれほどお姉さまが地上に関与することはよくないと言いましたのに、なぜまたお姉さまを呼び出したりしたんですか)
俺『あ、いやー』
月☆読(私は大国主の代わりを探すので本当に大変な日々を送っているんですよ。それなのにあなたときたら)
俺『もう諦めてスサノオに頼んじゃいなよ』
月☆読(それだけは絶対にありえません!!!)
やっぱりそういう反応か。これは天照を解放する話なんてしたらどんなことになるか分かったものじゃないな。
しかし、月☆読がこれだけ探しても大国主の代わりが見つからない天界は、一体どれだけ人材不足なんだ。