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参百卅伍.求婚

 明子「権大納言さま」


 それに対し、明子はすでに心が決まっているためか、迷いのない真っ直ぐの視線を権大納言に向けていた。


 明子「ここに私が来たことは私が竹仁さまに頼んでお願いしたことです。竹仁さまのせいではありません」

 権大納言「明子殿がお願いしたというのは?」

 明子「私は昔から権大納言さまのことをお慕い申しておりました。しかし、兄の手前、そのことを口に出せずにいたのです」

 権大納言「それは……」

 明子「そのことでかぐや姫さまに相談に乗ってもらっていたところ、今度の神託でこのようなことになり、竹仁さまにぜひにと言ってここまで連れてきてもらったのです」


 長い間思い悩んで口に出すのもためらっていたのが嘘のように、明子は権大納言への思いをはっきりと述べたのだった。


 明子「お願いです。私をあなたの妻にしてください」

 権大納言「明子殿……」


 権大納言が返事に躊躇うと、明子はさらに頭を下げて平伏した。


 権大納言「……わかった。あなたを妻にしよう」

 明子「ありがとうございます!!」

 権大納言「ただ、それには順序が必要だ。まずは帝と関白殿とを説得しなければならないが……」

 俺「帝のことは私がなんとかしましょう」


 権大納言が明子の告白を受けたことで、俺はほっとした。権大納言さえ納得してくれれば帝と関白はなんとでもなるだろう。特に帝のほうは秘密兵器もあるしね。


 それにしても、明子がいなかったら本当にどうなったことやら。あの流れで権大納言を説得できる自信は正直全然なかったよ。


 権大納言「なんとかとはどうするつもりなのだ?」

 俺「具体的なことはまだですが、多分、大丈夫です」

 権大納言「……分かった。竹仁殿がそういうならそうなのだろう」


 意外にも権大納言はそれであっさりと引き下がった。自分で言っておいてこう言うのも変だが、あれでよく納得したものだ。


 権大納言「関白には私が言う。正式に入内の話がなくなった後に改めて関白殿に話をしよう」


 入内の話が残っているうちに権大納言がそんな話をすると不敬ということになっちゃうから、入内の話がなくなるのを待たなければいけないのは仕方がない。


 もしかすると現代に帰る前には間に合わないかもしれないけど、さすがに仕方ないよね。


 俺「ありがとうございます」

 権大納言「礼には及ばない。私は神託に従うだけなのだから。それに、一番大変なのは帝のお心を変えなければいけない竹仁殿の方なのだよ」

 俺「ははは」


 大変だと言ったところで、帝の脳裏には消しても消えないほど天照に脅された時のことがこびりついていると思うので、また同じように脅してやればどうとでもなるんじゃないかと思うんだよ。


 煮ても焼いても食えなさそうな関白を相手にする方が俺としては嫌なんだけどな。その辺は感性の違いなんだろうね。

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