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参百卅壱.巧遅は拙速に如かず

 明子「あれ、ちょっと待ってください。あの時、たしか竹仁さまはお1人ではなかったような」

 俺「ええ、あの時は他に雪と雨がいました」

 中宮「雨とは?」

 空「天児屋命さまですわ」


 ついうっかり天児屋のことをいつものように雨と呼んだことに、普段の俺と雨の関係が見て取れたのか、中宮と明子は呆れてものも言えないようだった。


 明子「え、でも、あの時は雪さんはいらっしゃらなかったような」

 俺「もちろん、雪も男装してましたのよ」

 明子「本当ですか、雪さん?」

 雪「はい」


 雪は恥ずかしそうにうなずいた。


 それを聞いた明子は何か思案している様子だった。


 明子「かぐや姫さま」

 俺「はい」

 明子「権大納言さまとの話し合いですが、同席することはできませんか?」

 中宮「明子さん!?」

 俺「んー、いいですわ」

 空「ご主人さま!?」


 なにやら中宮と空がびっくりしているが、別にいいんじゃないかな、そのくらい。


 俺「明子さんも美人ですから、男装したらきっとすごく美男子になりますわよ」


 狩衣も葵祭のときに雪が着たやつがまだ残ってるから、それを着たらいい。


 そういえば、あの狩衣はもともと雨の服だけど、あいつはすっかり女装が板についちゃってすっかり狩衣を着なくなったな。春日神社でも女装したままだったけど、いいのかなあれで。


 中宮「明子さん、本気ですか?」

 明子「はい」

 中宮「拙速に動くと思いもかけない事態になってしまうかもしれませんよ。ここはかぐや姫さまに任せたほうが」

 明子「かぐや姫さまは近いうちにいなくなってしまいます。確かに拙速かもしれませんが、私は私の未来に対して責任を持つべきだと思うのです」


 心配する中宮に対して、明子はきっぱりとそう言い切った。その態度を見て、中宮も折れた。


 中宮「わかりました。かぐや姫さまに頼りすぎるのがよくないことは確かです。明子がそのように考えているのなら、何も言いません」


 こうしてお風呂の会はさまざまな意味で有意義な会となったのだった。主にお風呂が。

「巧遅は拙速に如かず」という言葉が孫子にあります。平安時代にはすでに入っていたようですが、平安貴族の中で広く読まれていたかというとそんなことはないんじゃないかと思います。

ということなので、最初ここで明子にこの言葉を言わせようと思ったのですが、明子が知っているはずがないと思って書き直しました。

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