参百卅.明智○五郎
俺「じゃあ、直接聞いてみましょう」
明子「ええっ!?」
中宮「かぐや姫さん、どうやって聞くつもりですか?」
俺「どうやってって、直接、権大納言さまのお宅を訪問すればいいんじゃありませんか?」
中宮「でも、さすがにそのセッティングを私どもがするのはいろいろと禍根が……」
俺「ああ、大丈夫ですわ。その辺はうまくやる方法はいろいろとありますから」
そう言って俺は立ち上がり、服の帯を解き始めた。
中宮「かぐや姫さん、何を!?」
俺「空、手伝って。雪、あれ」
雪「かしこまりました」
中宮と明子が呆気にとられている間に、俺はさっさと服を脱いで、雪が持ってきた着替えの服に袖を通した。
袴をはいて烏帽子をかぶるころには、明子の顔が驚愕の色に染まっていた。
明子「竹仁さま!」
中宮「え、竹仁さま!?」
俺が着たのは例の狩衣だった。
俺「明子さま、これまでだましていてごめんなさい。竹仁は実は私が変装したものだったのでした」
中宮と明子は驚きのあまり声も出ないようだった。
俺「私は竹仁としても権大納言さまと面識があります。ですから、私が権大納言さまに直接会って聞いてきましょう」
明子「あの」
俺「はい」
明子「本当にかぐや姫さまは竹仁さまなのですか?」
俺「そうですわ」
明子はまだ俺が竹仁だということが信じられないようだ。まあ、それもそうか。これまで別人で性別も違うと思っていて、ラブレターまで送っていた相手が実は俺だったなんて、すぐに信じろというほうが難しいか。
明子「どうして変装なんかをしてあの場にいたのですか?」
俺「あの時というのは臨時祭の時のことですよね?」
明子「はい」
臨時祭というのは賀茂臨時祭のことで、俺と雪と雨で試楽を見たときにトイレに行って道に迷って明子と出くわした時のことだ。
俺「あの時は、ちょうど空きがあったいい席が男性用の席でしたので、仕方なく変装したところを、運悪く明子さんに見つかってしまったのですわ」