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参百廿伍.普通のお饅頭

 先日の訪問ですでにお風呂に誘っていたこともあり、中宮と明子は2つ返事で招待に応じてくれた。中宮は身重で普通なら外出は許可されないのだけど、かぐや姫のところだからと特別に許可されることになった。


 というわけで、翌々日に中宮と明子は俺の家にやってきた。


 爺と婆は中宮が来るということで大騒ぎになっていたのだけれども、お忍びで来るのだからと大げさな歓迎はしないように言い含めて、本殿の方で形式的な歓迎の挨拶をした後にすぐに離れの方へと移ってもらった。


 実は、俺たちの住む離れの方へは、中宮はもちろん明子も入ったことはない。離れは居住結界で外界とは環境が全く異なっているので、事情を分かっている人以外は入らせないようにしているのだ。


 中宮「何か、急に涼しくなった気がします」

 明子「そうですね」

 俺「ここは1年中快適な気温と湿度になるようになっているんですわ」

 中宮「そんなことができるんですか?」

 俺「ここは特別なんです」


 中宮と明子には俺の正体をバラしてしまうつもりでいる。だから、今日は居住結界の空調をあえて点けたままで二人を案内した。


 俺「どうぞ召し上がってください」


 部屋には5人分の席が用意されていて、俺、中宮、明子に加えて雪、空が着席した。それぞれの前にはお茶とお饅頭まんじゅうが置いてある。もちろんどちらも平安時代には存在しないものだ。


 中宮「これは、なんと甘露な」

 明子「このように甘いものを食べたことはございませんわ」

 俺「お砂糖をふんだんに使ったあんこですから、おいしいと思います」


 この砂糖の入手についてはいろいろ苦労したのだけれど、お話としてはたいして面白くはないので敢えて説明しない。ただ、平安時代の甘味は甘みが薄くて今一つ物足りなかったということだけは言っておきたい。


 雪も空もあんこを初めて食べた時は衝撃を受けていたが、中宮と明子も同じ衝撃を受けているに違いない。


 中宮「かぐや姫さん、一体、あなたはどういうお方なんですか?」

 俺「私は今から凡そ千年後の未来から天照大御神によってこの時代に連れられてきたものですわ」

 中宮「天照大御神さま!?」

 明子「千年後!!」

 中宮「本当ですか?」

 空「中宮さま、それは本当のことだと思います」


 衝撃を受けつつも信じられないという表情をする中宮と明子に、空は話しかけた。


 空「私はこの目で何人もの高位の神々とご主人さまが話すところを見ています。ご主人さま自身も不思議な技をお使いになります」

 中宮「にわかには信じがたい話ですが、かぐや姫さんのことですからそれも本当のことなのでしょうね」

 明子「もしかして、かぐや姫さまは神様なのですか?」

 俺「私は神様ではないですわ。普通の人間です」

 中宮「失礼ながら、かぐや姫さまは『普通』とは言い難いと思いますけれど」

 俺「元は普通の人間ですし、心は今でも普通の人間です」


 このセリフ、前に天照が何回か言っていた。俺も何回か言った気がする。


 元人間で本人の意思とは無関係に神や神に近い存在になってしまったという意味で、俺と天照は似てるんだよな。まあ、俺のはその天照が原因なんだけど。

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