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参百廿参.政権交代

 俺「ね、武甕槌の加護を持ってる人間って誰なのかな?」

 武甕槌(知らないのか? 今、人間界での一番の権力者のはずだが)

 俺「帝?」

 武甕槌(人間界の階級にはあまり詳しくはないが、帝というのは天照様の縁者だろう? そっちじゃない)


 帝じゃない最高権力者? 武甕槌の縁者……、って、関白かっ!


 たしかに、武甕槌は藤原氏の氏神だ。藤原氏の氏の長者である関白が武甕槌の加護を受けているのはある意味当然か。


 だけど、関白が武甕槌の加護を受けて権大納言が雨の加護を受けているというのは、関白と権大納言の間で今後覇権争いが激化するということを意味している。しかも、関白は負けることを運命づけられているということだ。


 でも、関白の性格上、あっさり権大納言に道を譲るようなことはしないだろう。現に権大納言の妹の中宮に対抗して明子を入内させる画策を今でも続けている。


 現状は俺の存在が波乱要因になって明子の入内の話は進まないが、俺がいなくなったら明子は関白と権大納言の政争のど真ん中に放り出されてしまうのは目に見えているじゃないか。


 これは明子の恋愛相談なんかより目じゃないくらい深刻な問題だ。それこそ明子の生死に関わるような。帰る前にこの話だけは絶対に片付けていかないと。


 と言っても、どう解決すればいいのかまるで思いつかない。困った。


 俺「分かりました。今日はもう帰りますわ」


 武甕槌はこの件に深入りするつもりはなさそうだから、これ以上具体的なことを話し合っても実りは少ないだろう。そもそも今の武甕槌に人間界の問題まで手を広げる余裕はないに違いない。


 天照の影響が強くなって武甕槌が騒いでいた頃は、大国主も元気だったから、忙しいって言ってもまだ全然余裕があったものな。


 それよりも早く帰って雪や空と相談しよう。


 武甕槌(そうか。墨を連れてきてくれたことは感謝している。彼女なしには葦原中国の管理は到底間に合わなかったに違いない)

 俺「お礼は実際に手伝っている墨に言ってください。……あ、そうだ。せっかくなんで、今度一つ頼みごとを聞いてくださいね」

 武甕槌(内容によるが、できるだけ善処しよう)


 おろ、警戒させちゃった。俺って信用ないのかな。


 俺(墨、じゃ、そろそろ帰るよ)


 春日神社を発つ前に墨に念話を一本入れておいた。


 墨(あ、はい。今、行きます)

 俺(見送りはいいよ。じゃ、また様子を見に来るよ)

 雨(ご主人さまっ!)

 俺(頭に響く! もうちょっとボリュームを落として)

 雨(次来た時は約束のハグしてください)

 俺(えらく自信だな。でも、ハグは現代に帰る直前だから。それに今の仕事内容じゃハグはないな)

 雨(えー)

 俺(えー、じゃない。そんなに俺のハグは安くない)

 雨(うー。そうか。帰る直前なのか)

 俺(後、勤務態度は墨に聞くから、途中で手抜きしたらバレるからね)

 雨(なぜ分かったし!)


 雨の浅はかな考えに若干頭痛を感じながらも、墨にもう一度声を掛けてから春日神社を後にした。急いで雪と空に話して今後のことを考えないと。

年内の通常更新はこれでおしまいです。今年も1年、お疲れ様でした。来年は国王様の方から連載再開予定です。


さて、神様の世界の変化と人間界の変化が連動しているという話が本編中に出てきましたが、本小説に出てくる神様の異動はちゃんと日本の歴史に対応しています。


まず、摂関政治は10世紀に兼家、道長を経て最盛期に至るのですが、ちょうど天照が解放され、大国主が病に倒れて、天児屋が地上管理者になる流れに対応します。


また、大国主が倒れてスサノオがバックアップに入るところは、平安時代に杵築大社(出雲大社)の主神が大国主からスサノオに移り変わったことと関係しています。


スサノオが宗像三女神イッチーたちを代理として立てますが、これはその後に来る平家の時代を映しています。というのは、平清盛は厳島神社を保護して氏神としたからです。


大国主の後継者の本命であった八幡神は有給休暇で海外旅行に行っていましたが、帰ってくると宗像三女神に代わって地上管理者の任に着くことになります。これが、八幡神を氏神とした源頼朝の鎌倉幕府に繋がり、以後、八幡神の長期政権になるのに合わせて武家の時代が長く続くことになります。


ちなみに、藤原氏の天下はあまり長く続かなかったですが、貴族の血脈としては現代まで残ることになります。天児屋はちゃんと仕事はしていたものの、やはり天下を取るようなカリスマはなかったということなのでしょうか。

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