参百拾捌.今すぐ逝きます
雨(神様基準でも3年は十分長いよっ)
俺(あれ、そう?)
雨(しかも、1回会議をすると新しい会議が2つも3つも増えるんだよ。単純計算しても絶対に終わらないよっ)
ああ、なんかすごく泥沼にはまり込んでる感じがするなぁ。といっても、俺も神様の仕事のやり方とか実はあんまりよくわからないんだよな。
俺(大国主に相談してみた?)
雨(したよっ。でも、あいつの話は全然参考にならないんだよっ)
俺(なんで?)
雨(あいつのアドバイスは10人位の人の話を同時に聞くような特殊能力が前提になってるんだよ)
ああ、そう言えばそんな歴史上の人物がいたな。確か聖徳太子だったっけ?
俺(神さまならそのくらいできるだろ)
雨(できないよっ!! あ、もう休憩時間終わりだ。はいっ、今すぐ逝きますっ!!!!)
そう言って慌ただしく念話は切られてしまった。て言うか、最後の一言、漢字が間違ってなかったか?
まあ、何の役に立つか分からないけど、一度様子を見に行ってやるか。
俺「墨、これから春日神社に行くんだけど、一緒に行く?」
墨「はい」
墨はそう言うと腕を伸ばしながら体をぶるぶると震わせた。猫娘なだけあってところどころ動きが猫っぽくて可愛いなぁ。
なんで墨を連れて行くかというと、俺がいなくなった後、墨は春日神社に居候させてもらおうと思っているので、仕事の手伝いくらいはできる方がいいに違いない。いい機会だから一緒に社会見学とかしてみるといいと思ったのだ。
俺「雪と空は留守番よろしくね」
そう言って、俺は式神を呼び出して留守を頼み、春日神社に向かって飛び立った。
墨も随分飛行には慣れてきたようだ。最初の時はかなり速度を押さえて飛んでいたけれど、今はかなり速い速度で飛んでも平気な顔をしている。むしろ自力で飛べるはずの雨よりも怖がらないというのはどういうことだ?
そんなわけで、春日神社までの飛行はあっという間に終わってしまった。
俺「雨、いるー?」
神社の神域の中を適当に歩きながら雨を読んでみるが返事がない。念話をしても反応が帰ってこない。
俺「どこに行ったのかしら」
墨「ご主人さま、あれ」
墨がくいくいと俺の袖を引いて違う方向を指差す。そちらには何やら低級神が忙しそうに出入りしている建物があった。確かに怪しい。
早速、出入りする低級神に混ざって建物の中に潜り込むと、低級神たちは全員同じ方向に向かって歩いていたので、その後をついていって一つの部屋にたどり着いた。
俺「わぁ、何です、これは?」