参百拾漆.プロ○ェクトX
女子会を堪能して次の約束まで取り付けたのでご機嫌で屋敷に帰ってみると、墨が縁側でぐでーと横になっていた。
俺「墨、ただいま」
墨「っ、ふぁっ。お、おかえりなさいませ、ご主人さま」
俺「どうしたの?」
墨「べ、別に、久しぶりに1人ぼっちで寂しいななんて思ってたわけじゃないにゃ」
ああ、久しぶりに1人で寂しかったんだな。
俺「よしよし。それじゃあ今日はこれから1日たっぷりかわいがってあげるわ」
墨「そ、そんな風に尻尾を触っちゃだめにゃぁ」
帰る前に心残りのないように墨のこともかわいがっておかないとね!
墨「にゃぁっ」
そんな調子で何事もなく数日が過ぎた時、朝ご飯を食べていると突然念話が頭の中に響き渡った。
雨(助けて、ご主人さまっ!)
俺「今日もご飯がおいしいわ」
雪「え、あ、ありがとうございます」
雨(ご主人さまっ!!)
ちなみに今日の朝ごはんは焼き魚、海苔、漬物、味噌汁にご飯という典型的な焼き魚定食だ。俺と雪の日々の工夫の賜物で、調味料も随分進化してとうとう現代の日本食と遜色ないものが作れるようになったのだ。
個人的に、もうこれは歴史の教科書に乗る程の偉業と言ってもいい。プロ○ェクトXが取材に来てもおかしくないレベルだ。
雨(ご主人さま、返事してよっ!!!)
俺(雨、うるさい。今、朝ご飯)
雨(それどころじゃないんだよ。僕、もう死んじゃうよ)
俺(どうせ仕事が多すぎるとかそんな理由でしょ)
雨(その通りだよっ。よく分かったねっ)
まあ、あの大国主がさばいてた量の仕事が追加で降ってきてるんだからな。雨には荷が重いだろう。一晩で逃げて来なかっただけでも褒めてやるべきなのか。
とにかく、食事の間は黙っているように雨に言って、雪と墨と空との食事を楽しんだ後、雨に念話を繋げた。
雨(遅いよ、ご主人さま)
俺(で、状況は?)
雨(死にそう)
俺(雨の希望は聞いてないよ)
雨(死にたいんじゃなくて死にそうなのっ。3年先まで会議の予定がぎっしり詰まってるんだよっ)
俺(大丈夫。3年なんて一瞬だよ、一瞬)
※ この『一瞬』は神様基準です。