参百陸.積録画
俺「……ごめん。そうだったね。雪は始めから私のことだけを考えて来てくれたんだったわ」
だめだな、俺は。こうやっていつも雪を不安にさせて。
雪が優しくて強いから、つい何も言わなくても分かってくれると思って言葉が足りなくなるんだ。そして、いつの間にか雪に疎外感を与えてしまっている。
雪のことを大切にしようとして、逆に雪を俺から遠ざけてしまうくらいなら、むしろ雪に持てるものなら渡してあげるほうが良かったんだ。
なぜなら、共有しているものの重さが2人の絆を作るのだから。
俺「雪。天照のことは雪には何の関係もないことなの。だから、これはただの私のわがままに過ぎないわ」
雪「いいんです。かぐや姫さまのわがままを全部聞いてあげたいというのが、私のわがままなんですから」
だから、これは本当なら雪から言い出させるべきことじゃなかった。俺の方から言い出してお願いするべきだったのだ。その上で、何かあったら全力で俺が守ればよかったのだ。
でも、今からでも、順序は逆になってしまって格好はつかないけど、もう一度やり直してもいいよね。
俺「お願い。天照の魂の受け皿になってくれる?」
雪「もちろんです。かぐや姫さま」
俺「そして、一緒に現代に行こう」
雪「はい……!」
そうだ。現代に帰るんだ! 雪と2人で!!
俺「……だけど、まずは大国主に雪に憑依させても大丈夫かどうかだけ確認しておかないと」
俺は早速長距離念話をつなごうとするが繋がらない。
俺「あれ?」
雨(ご主人さま、結界が)
俺「あっと」
居住結界のロックを掛けたままだった。解除しないと長距離念話も繋がらないのだ。
早速、ロックを解除して、大国主に話しかけた。
俺(大国主)
大国主(かぐや姫さん、どうしました?)
俺(天照の人格の受け入れのことだけど)
大国主(あ、はい、ちょっと待ってください。……、一時停止、一時停止と)
ちょっと待て。一体お前は今何をやっている?
大国主(はい、いいですよ)
俺(ちょっと疑問なんだけど、お前、本当に病気なのか?)
大国主(ごほんごほん)
わざとらしく咳き込むな。まあ、すせり姫が言ってるんだから間違いないと思うけど。
大国主(録画は毎日消化していかないとどんどん溜まっていって結局見れなくなっちゃうんですよ。病気だからって休んでいられないんです)
俺(分かった分かった)