参百肆.脱ニート
俺「ただいま」
雪「おかえりなさいませ」
空「おかえりなさいませ」
墨「にゃー」
雨(お、おかえり)
俺「あれ?」
雨(な、なんだよ。悪いか?)
俺「別に悪くないけど」
大国主の言った通りだな。本当に帰ってきてたよ。一体、大国主はなんて言って説得したんだ。
俺「何か言うことは?」
雨(わ、悪かったな。いきなり家出とかして)
俺「それだけ?」
雨(ぼ、僕もさ、これまでよりもうちょっとだけ仕事とかしてみてもいいかなって)
俺「よし、よく言ったわ。武甕槌の後任はあなたに決定よ」
雨(は、はあああああっっ!?)
俺「いやいや、ようやくやる気になってくれましたたわね。よかったよかった」
雨(ちょっと待って、話が見えない。何がどうなってるのか説明してよ!)
空「武甕槌さまがどうかなさったのですか?」
俺「えっと、結界内に侵入者の形跡はないわね。念のため、建物への出入りを完全に禁止しましょうか。建物、ロック、ON」
俺は居住結界の機能を使って建物への侵入、透視、盗聴などを完全に禁止した。これで中で何を話しても外に漏れることはない。例外は天照と、後はどんな隠し技を持っているか分からない大国主くらいだ。
ちなみにこの機能は、張っているとプライバシーは守られるものの、外部との連絡が全く取れなくなって日常生活には不便すぎるので、こんな時くらいしか役には立たないちょっと残念な機能なのだ。まあ、今回はそれが役に立つのだけど。
俺「高天原って分かるかしら?」
空「神々が住まう天上の世界のことだと存じますが」
俺「武甕槌は今は地上の管理を任されているんだけど、今度から高天原の責任者になる予定なんだよ。で、地上の管理者のポストが空くんだ」
雨(それで、なんで僕なんだよっ)
俺「正直、武甕槌に匹敵する神格を持っていて手の空いてる神様っていないんだよ。大国主の後任探しでもあんなに大変だったし、その上立て続けに武甕槌だから、雨が出るしか残る手はないわよね」
雨(そんなの、ご主人さまがやればいいじゃないかっ)
俺「なるほど!」
たしかに、俺が今神格を得るようなことになったら、武甕槌レベルにはランクされそうな気がするな。神になる必要条件ってよく知らないけど、そんなに難しくないなら現代に帰るまでの間ならやってもよかったかも。
俺「でも、そういうわけにはいかないのよね。すぐに現代に帰っちゃうから」
雨(えっ、何で?)
俺「天照の結界を解除して、同化の魔法を解くわ」
雨(そんなことしたら、天照が……)
俺「だから、私が天照の魂を入れる器になるのよ」
雨(ええっ、嘘でしょ)
俺「もう武甕槌と大国主はその線で動いてるわ」
雨(そんなこと言ったって、月☆読が……)
雪「あ、あのっ! 魂を入れる器って何の話ですか!?」
物騒な言葉を聞いて、雨の発言に割り込んで雪が慌てていつになく大きな声を上げた。