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参.式神と俺

 爺と別れた後、俺は自室に戻って、もう一度例の箱を開けてみた。箱の中には手紙の他に、人型に切られた紙と、狩衣かりぎぬ指貫さしぬき立烏帽子たてえぼし足袋たび足駄あしだと、男性の普段着一式の形に切られた紙が入っていた。


 まず、手紙を取り出して読んだ。そこには次のように書いてあった。


 『これを読んだら、人目を忍んで上賀茂神社まで一人で来ること。人型の紙は姫ちゃんの身代わりに、その他の紙は姫ちゃんの変装に使ってね (^-^)v』


 (…姫ちゃんって誰だよ)


 手紙の2枚目には、今の屋敷から上賀茂神社までの手書きの地図が書いてあった。なんか、頼りない地図だが…。


 (じゃあ、今夜、行ってみるか)


 人目を忍ぶってことは、昼より夜のほうがいいだろう。幸い今日は満月だ。月明かりで夜でもなんとかなるだろう。ダメそうならさっさと帰って、日を改めて出直せばいい。


 (後は残りの紙切れか。身代わりにって言っても、これをどうすれば身代わりになるんだ)


 俺は人型に切られた紙を箱から取り出した。すると、その紙は光を伴って消え、代わりに目の前に光と共に人が現れた。


 (なっ、なっ、なっ)


 俺は思わず大声を出しそうになったが、慌てて手で口を押さえて、すんでのところで堪えた。


 落ち着け。俺は花も恥じらう男子高校生だ。例え突然目の前に人が現れても、大騒ぎするなんてみっともない。それが、推定小学1年生の裸の女の子でもだ。


 女の子『よう、俺』


 健全な男子高校生は、小学校1年生の女の子を見ても、可愛いなとしか思わない。それ以上はない。しかし、この子は本当に可愛いな。まるでこの世のものとは思えないほどに…


 女の子『あン。そんなに見つめちゃ恥ずかしい…』

 俺『きっ、気色悪い声を出すなー』


 裸の女の子が出した声に我に返った俺は、思わず叫んでいた。そしてその後、後悔した。今の叫び声で爺や婆や他の使用人たちが来るかもしれない。そうなったら、この状況をなんて説明する?


 俺は女の子の口を抑えて耳を済ませたが、幸い誰も気づかなかったようで、近づいてくる足音はしなかった。この屋敷は伝統的な日本家屋で、廊下を歩けば音がするのですぐに分かる。


 女の子『あン。そんなッ。激しい、ン…』

 俺『いい加減にしろよ! お前は一体誰なんだ!』


 いつまでも変な声を出している女の子に、俺は当然あるべき疑問をぶつけた。


 女の子『俺だよ! 俺』

 俺『だから誰だよ!』

 女の子『だから俺だよ』

 俺『俺ってなんだよ。オレオレ詐欺か、お前は』

 女の子『お前が呼び出したんじゃねーか。お前そっくりの姿形をした、お前の身代わりの式神だよ』


 なんだと? これは俺だと? 確かに身長も年齢もほとんど同じだ。顔は、いままできちんと自分の顔を見たことがなかったが、洗面の時に水面に映る俺の顔は確かにこんな輪郭だったかもしれない。


 (しかし、なんて可愛いんだ)


 俺はもう一度目の前にいるもう一人の俺を見た。それは到底人間とは思えないほどに可愛い女の子だった。五感を越えて心まで揺り動かされるような、そんな魅力があった。この子が大人になったら、世界中の男も女もすべてをとりこにするような絶世の美女になるんではないだろうか?


 式神(=女の子)『あー、もしもし。ナルシシズムに耽るのはいいんだが、とりあえず服を着させてくれ』

当面の間は、週2回投稿のペースで進めていきたいと思います。


ところで、烏帽子は成人男性の服装ですが、長い髪を隠すためにわざと衣装として用意しています。

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