弐百玖拾玖.クッキー・○ンスター
これは大変なことを聞いてしまったんじゃないか? 天照を封じている結界が破裂して高天原が消滅って、葦原中国の秩序がどうとかというレベルの話を超えてるじゃないか。
しかしこの話、誰の協力が望めるかというと難しい。スサノオは理解してくれるだろうけど高天原には力を持っていないし、月☆読は絶対協力してくれなさそうだ。
月☆読の協力がないとなると、高天原の神々で協力してくれるのはいなさそうな気がする。スサノオを追い出したのと同じ状況になるんじゃないだろうか。
いや、この間の感触だと、武甕槌なら話くらいは聞いてくれるか?
俺「ちょっと武甕槌のところに行ってくるわね」
雪「あ、かぐや姫さま」
俺「ん、どうしたの?」
雪「あまり、ご無理をなさらないでください」
俺「分かってるよ」
武甕槌は何もなければ春日神社にいるはずだ。忙しくしているだろうから会ってくれるか分からないけど、時間が掛かりそうならちょっと強引に行かせてもらおう。
今回は誰も連れてきていないので身軽だ。その分、思いっきりスピードが出せる。雨とか連れてると、速く飛ぶと怖い怖いとうるさいんだよな。
そんなわけで、あっという間に春日神社に着いた。
たしか、神域への入り口はこの辺にあったはず。
春日神社に来るのは雨と初めて会った時以来なので少し探したけれど、もう神域に入るのも慣れたのですぐに入り口を見つけて入ることができた。
うん。やっぱり、神域の中は外とは違って快適だ。俺の屋敷もいっそ神域にしてしまうことはできないものかな。
神域の入り口から奥へと進んでいくと、以前見たのと同じ建物が見えてきた。あのどれかに武甕槌がいるはずだ。
とりあえず、一番近い建物に入って最初に見つけた平の神様を捕まえて武甕槌の居所を聞き出し、どんどん建物の奥へと進んでいった。
俺「武甕槌」
武甕槌(かぐや姫か。今は忙しい。後にしてくれ)
俺「大国主と話をしたわ。天照の結界の件で」
武甕槌(……1時間で仕事のケリをつける。しばらく待っていてくれ)
お茶とお菓子を出してもらって、しばらく言われた通り待っていると、1時間半くらいで武甕槌が来た。
武甕槌(待たせた)
俺「遅い」
1時間半もお菓子ばかり食べてたらすぐに太っちゃうんだよ。お菓子の力をなめちゃだめなんだよ。あっという間なんだよ!
げっぷ。
武甕槌(で、大国主は何と?)
俺「天照の結界が爆発して高天原が吹き飛ぶのよ」
俺は大国主から聞いた話を武甕槌に説明した。