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弐百玖拾肆.権現様の使い

 雪「結局、雨さまは見つからなかったのですか?」

 俺「うん。一応、屋根裏とか床下とか探したり、念話で呼びかけたりしたけど反応なし」


 あの後、近くを探しつつ杵築大社に一晩泊まって戻ってくるのを待ってみたのだけれど、結局、雨が姿を現すことはなかったのだ。


 俺「これって、家出だよねー。仕事しろってプレッシャーを掛けすぎたかしら」

 雪「雨さまは繊細な方ですから」

 俺「でもね、雨もいつまでもニートで引きこもってちゃだめだと思うんだよ。少しは外の世界とも関わりを持たなきゃ」


 言っても中々聞かない雨に聞かせるためにわざと厳しく当たってきたけど、それが原因で家出したんじゃ失敗だったな。


 まあ、厳しくって言っても結局許してタダ飯を食わせてたんだから全然厳しくないんだけど。


 その気になったら使い魔のマスター権限で強制的に連れ戻すこともできるけど、そんなふうに連れ戻しても同じことだから本人の気が変わるまで放っておこうと思う。


 俺「そんなことより、明子から手紙が来たんですって?」

 雪「はい。こちらです」


 見ると、案の定、中身は神託のことだった。


 神託が下りてかぐや姫に打ち明けなさいという内容だったのですぐに来て話がしたい、ということだった。


 早速返事を書いて、明日、時間を取って話をすることが決まった。


 翌日、明子は午前中から俺の屋敷に来た。


 武甕槌はあまり世間と関わらないようになんて言ってるけど、明子の件はここまで乗り掛かった船だから最後まで責任を持たないとね。


 明子「かぐや姫さん、朝早くから時間を取っていただいてありがとうございます」

 俺「全然! 私も明子さんに会えて嬉しいわ」

 明子「あの、ところで、寛子さんはどうしてここに?」

 俺「寛子さんは私の女房になったのよ。事情が事情だからあまり公にはしてないけど」

 明子「あ!」

 俺「今は空って呼んでるわ」

 空「空です。今後ともよろしくお願い致します」


 空はそう言って明子に対して深々と頭を下げた。


 その様子を明子は複雑な表情で見つめるだけだった。


 俺「空もここで同席していいかしら。雪はいつも同席してるけど、空にもいつも雪と同じ扱いをするようにしているの」

 明子「構いませんわ。かぐや姫さんのことは信頼しておりますから」


 明子は懐から丁寧に包まれた文を取り出し、はらはらと開くと中から1枚の紙が現れた。


 明子「先日、懇意にしている山門の和尚かしょう様の下へ春日権現様のお使いの方が現れて、この文を置いていったそうなのです」


 春日権現様の使いだって! 権現様本人なのに、使い扱いにされちゃってるよ。貫禄なさすぎ……。


 ちらと雪と空を見ると、やはり2人とも微妙な表情をしている。


 俺「見せていただけるかしら?」


 とりあえず、形だけ手紙を見ることに。私が書いたものだから見なくても中身は分かってるんだけどね。

天台宗の本山である比叡山延暦寺は別名「山門」とも呼ばれました。10世紀の終わり頃に天台の中心が延暦寺と三井寺(別名「寺門じもん」)に分裂することになりますが、その事件はこれよりももう少し後の事です。


それと、天台宗では和尚のことは「おしょう」ではなく「かしょう」と読むそうです。

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