弐百玖拾弐.神様サイド
その後、雨の耳元で起きないとスサノオの下に置いて帰ると言ったら一発で目が覚めた雨を連れ、スサノオに黄泉比良坂の入り口まで案内してもらって地上に生還した。
地上に出た時にはもう太陽も西に沈もうかというところで、もうちょっと遅かったら天照が殴り込んできたに違いない。
危なかった!
武甕槌(天児屋、その顔はなんだ?)
すせり(イー! ぶはは)
おっと、まだ雨が仮○ライダーのままだった。
そしてすせり姫、それは自分が1号を改造したショッカーだという主張なのか?
雨(え? 顔?)
武甕槌(さっさと洗ってこい)
俺「武甕槌、ちょっと話があります」
雨の仮○ライダーのペイントは落ちなかった。すせり姫によれば数日で落ちるということなので、それを待つしかないみたいだ。
仕方ないので雨は仮○ライダーのままにして、武甕槌の話をみんなで一緒に座って聞くことにした。
武甕槌(スサノオがそんなことを)
俺「何か知ってますかしら?」
月☆読はもう空の上だし、直接聞いても教えてくれない気がしたので、ダメ元で武甕槌にスサノオと月☆読の因縁を聞いてみることにしたのだ。
雨は知らないみたいだったので、武甕槌も知らない可能性も高いけど。
武甕槌(天児屋が知らないのは無理はない。元々こういう政治的なことからは遠い所にいたからな)
俺「じゃあ武甕槌も?」
武甕槌(いや、私は大体のことは知っている。天児屋と違って武闘派だったから否応なく戦力に組み込まれていたからな)
武甕槌の話は天照がまだ天照大御神と同化する前に遡った。
その当時、本来の神の方の天照は死にかけていた。理由は太陽神となったことで供給され続ける膨大な神力のためだ。
天地開闢後の混沌とした世界に秩序を与えるため、誰かが太陽神になることは不可避であったものの、その役割を担う神は身を焼き尽くす程の神力を一身に受けて御して行かなければならない。
天照はその役割を優秀にこなしてきたが、やはり強烈な神力は徐々に天照の精神を蝕んでいき、とうとう自我が崩壊しようとしていたのだ。
そんなとき、人間界でニニギが娘を天照と同化させる呪術を行うことを目論んでいることが判明した。
この事実に天界は揺れた。月☆読はこの人間の娘を受け入れることで天照の自我を補強して延命することを望んだ。しかし、スサノオはそれに強烈に反対した。
天照自身はすでに意識朦朧として寝ているだけだったので、このようなことが起きていることなど知る由もない。ただ病床に臥せって最期の時を待つのみだった。