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弐百捌拾陸.かくれんぼ

 俺「へー。じゃあ、すせり姫は根の国に行っても迷わないんだ」


 あの話し合いの後、日が暮れる前にということで早速黄泉比良坂へと潜り込んだのだ。なにせ日が暮れると天照が来て面倒くさいことになっちゃうかもしれないもんね。


 ということで、今は真っ暗な洞窟の中を草のつるで繋いだ雨を引きずりながら、すせり姫とおしゃべりしつつハイキングしているところなのだ。


 すせり(子どもの頃はよくお父様とかくれんぼをしていましたから)

 俺「え、でも、あそこって醜女とかいて、子どもには危険じゃないかしら?」

 すせり(だから、かくれんぼをすると私のことをお父様が必死に探すのよ。ふふふ)


 すせり姫は子どもの頃の楽しい思い出という感じで笑っているが、当のスサノオにとっては全く笑えないシチュエーションだったんじゃないか、それ?


 すせり(隠れてる間に地形がどんどん変わるから、じっとしてたらすぐに見つかるの。だから何に隠れるか決めたらそれと一緒に歩き回るのよ)

 俺「それだと隠れてるもの次第でどんどん遠くまで行っちゃったりしないの?」

 すせり(そうなのよ。それで一度あんまり家から遠くまで離れちゃったからお父様が私のことを見つけられなくなっちゃって)

 俺「え、それまずいんじゃない?」

 すせり(その時には私が見つからないから、醜女の方を退治すればいいって思ったみたいなのよね)

 俺「え゛?」

 すせり(一晩待って見つけてもらえなかったから帰ってみたら、根の国の9割近くの醜女が仕留められた後だったのよ)


 スサノオ、マジヤベー。それ、完全に醜女たちはとばっちりじゃん。


 すせり(もともと根の国の安定化のために醜女の大規模討伐を計画してたみたいなんだけど、その必要もなくなったから結果オーライってことで)

 俺「そ、そうなのかな」

 すせり(あ、そろそろ出口よ)


 すせり姫がそう言うと、前の方に光が見えてきた。


 と思ったら、突然雨が後ろからヒシッと抱きついてきた。


 雨(ごじゅじんざばー、がえりだいよー)


 おい、こら。人の服で涙とか鼻水とかを拭くんじゃない。


 俺「大丈夫よ。今回はすせり姫がいるんだから」


 それに、パニックにならないで落ち着いて対処したら俺でも醜女の相手は十分できるはずだし。まあ、1人で騒いで全員にパニックを感染させそうなのが味方にいるから侮れないけど。


 雨(だがらごわいんだよー)

 すせり(怖くないわよー)

 雨(ひーっ)


 すせり姫はにこやかに手を振っているが、雨はすせりから身を隠すように俺の反対側へと回った。


 俺「何隠れてるのよっ」


 そう言って軽く身を躱して雨の背中を押すと、ちょうどいいタイミングで雨だけが洞窟から出て根の国へと足を踏み入れた。


 雨(いやーっ)

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