弐百捌拾参.パ○タッチ
俺「じゃ、雨。手を出して」
雨(はい!)
俺「じゃ、行くよ」
俺は雨の手をしっかり握って、全力で杵築大社に向かって飛び立った。
雨(ぎゃー。ご、ご主人さま。スッ、ストッ)
俺「分かった。もっとスピードを上げるよ」
雨(ひぇーー。た、助けてーーー)
だから言ったじゃん。杵築大社までそんなに時間は掛からないって。
俺達が杵築大社に着いた時、集まっていたのは予想通り武甕槌、月☆読、そしてすせり姫の3柱だった。
天照は来ていない。なぜなら天照は太陽神だから日中は太陽のある空にいるからだ。今日は満月だから、夜になったら交代で月☆読が空に行くはずだ。
武甕槌(早かったな)
俺「パータッチで来ましたわ」
武甕槌(パータッチ??)
雨(き、気持ち悪い……)
すせり(あらあら、大変)
大変と言いながら全然大変そうではなく、むしろ面白そうにしているすせり姫は相変わらずどこか掴みにくい人だ。
すせり(238キロくらい出たのかしら?)
武甕槌(私は天児屋だけ呼んだつもりだったが、どうしてかぐや姫がここにいるのだ?)
俺「大国主のことなら私にだって関係があるわよ。だって、大国主は私の使い魔なんだから」
武甕槌は眉を顰めたがそれ以上は何も言わなかった。
武甕槌(大国主の容体はあまり良くない。しばらくは絶対安静だ)
俺「一体、大国主は何をしてそんなことになったの?」
武甕槌(睡眠不足と神力の使いすぎだ)
俺「ああー」
要するにアニメの見過ぎか。まあ、仕事もしてたから、睡眠時間を削らないとアニメが見れないのは分かるけど。
すせり(後、高血圧に高コレステロールに高脂血症に糖尿病にメタボに……)
あー、あの体型だもんな。つか、大国主って医者じゃなかったっけ。医者の不養生ってやつか。
武甕槌(とにかく、これでしばらくは大国主が地上の管理をすることができなくなってしまった。急いで代わりを探さないといけない)
代わりねー。
俺「雨にやらせてみようか」
雨だって一応偉い神様なんだし、仕事をせざるを得ない環境に追い込んだら案外できたりするんじゃないか? 雨の場合、能力というよりやる気がないのが問題だもんな。