弐百捌拾壱.しりとり
俺「よし、じゃあさっそく今夜にでも決行しましょう」
雨(ご主人さまっ)
俺「な、何? 急に大声を出すとびっくりするんだけど」
雨(僕も行きたいです)
俺「いいわよ、行かなくても」
雨(行きたいっ! あ、いや、あの、行きたい、じゃなくて、連れて行ってください、お願いします)
俺「どうしてかしら?」
雨(だって……、もうぼっちは嫌なんだよ)
雨はそう言ってぷいとそっぽを向いてしまった。ちょっと顔が赤いのは恥ずかしいんだろうか。
俺「はぁ。そこまで言うなら、今夜は一緒に行ってもいいわよ。普段から仕事さえしてればみんな評価してくれると思うんだけどね」
雨(あ、ありがとう、ご主人さま!)
そういうわけで、俺と雨、それから道案内に空を連れて、比叡山のお坊さんの枕元に立って明子宛の和歌を一首託してきたのだった。
その辺の詳細はいつもと同じなので大して面白くもないので割愛するけど、初めて空を飛んだ(俺が抱えて飛んだ)空の反応が大変面白かったことは一言言っておいてもいいと思う。
お坊さんに和歌を渡してから、それが明子の手に渡って最終的に俺のもとに連絡が来るまでは少し時間がかかる。でも、それがどのくらいかは分からないからそれまではのんびり待っているしかない。
俺『ヒゲダルマ』
雪『まどマギ』
俺『銀魂』
雪『マシリト』
俺『とある魔術の禁書目録』
雪『スーチーパイ』
雪の現代語の勉強も大分進んできて、最近はしりとりができるようになってきた。これも俺が熱心に教えて雪が熱心に勉強したからだ。ちょっと語彙に偏りがある気がするのは気のせいだ。
俺『イーストブルー』
雪『ルパン三世』
俺『イカ娘』
雪『女神転生』
俺『また「い」か!』
空「ご主人さま!」
しりとりがいいところまで進んで白熱してきたところで、空が慌てて部屋に入ってきた。
俺「どうしたの、空?」
空「右大臣さまが急病で辞職なされたそうでございます」
俺「え、右大臣が?」
空「それで、どうやら欠員補充にはご当主さまが内定されているご様子で」
俺「お爺さまが!?」
右大臣ってことは位階も従二位になるのか。爺、どんだけ出世するつもりだ。というか、ついこの間権大納言と左大将に就任して正三位になったばかりじゃないか。
これも人間界の秩序に混乱が生まれているってことか。
俺「右大臣は大丈夫なの? 命に別状とかは?」
空「医師の見立てでは安静にしていれば大丈夫とのことだそうでございます」
俺「そう、よかった」
後で天照を連れてこっそりお見舞いに行って、やばそうな病気だったら直してもらおう。