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弐百捌拾.ぬばたまの秘奥義

 雨(な、なに?)

 俺「やっぱりダメね」


 俺は雨から視線を反らすと断定するように言った。


 雨(何が!?)

 雪「いえ、そうではなくて、偉いお坊さんとかの口から神託が下りたということにして明子さんに口添えしてもらうというのがいいんじゃないかと」

 俺「偉いお坊さんね」

 空「私、明子さんが懇意にしている比叡山のお坊さんを知っておりますわ。その方にお頼みすればいかがでしょう」


 おお、こんな所に意外な繋がりが。新人のくせになかなか使えるな、空。


 俺「でも、やっぱりダメだわ。そうするとお坊さんにも明子さんの秘密がバレちゃう」

 雪「そこはうまく誤魔化せないでしょうか?」

 俺「うーん、あんまり隠し事が多いとお坊さんが協力してくれるとは限らないし、関白に相談されちゃったらまずいし」

 雪「そうですね」


 そう言って、皆でうーんと頭をひねった。


 俺「……そっか、だから神託だわ!」

 空「ご主人さま?」

 墨「にゃ?」

 雪「何かいいアイデアですか?」

 俺「そのお坊さんに本物の神託を下ろせばいいのよ。お坊さんだって本物の神託なら曖昧な内容でもちゃんと明子さんに伝えてくれるわ」


 どこの誰ともわからない娘の言葉は軽く流したとしても、神さまの言葉を無視することはできないでしょ。


 もちろん本物と言っても俺たちでそれらしく見せるだけなんだけど、問題はどうやって神さまの言葉らしくするか。


 雪「やっぱり雨さまにお願いするのですか?」

 俺「いいえ、神託を下ろすだけならそれらしい格好と言葉遣いをしてるだけで勘違いしてくれるんじゃないかしら」

 雨(え、じゃあ、僕の出番は?)

 俺「ないわ」

 雨(そ、そんなぁ)


 雨の協力をあっさり却下した俺は、別の懸案事項を考え始める。


 俺「問題はお坊さんにはわからないで、明子にだけ分かるような神託の内容を考えないとだめなのよね」


 伝言をしてもらう都合上、どこからどこまでが神託かわかりやすい方がいい。そういう意味では手紙を託して明子に渡してもらうというのもありかもしれない。


 空「ぬばたまの よるはあかりの かげになる いしのうえにぞ つきのたすけん」

 俺「それだわっ!」


 和歌を読んで、それをお坊さんに託せばいいんだ。何かミステリアスな感じで神様っぽいし、明子以外が見ても意味がわからないし。


 空が読んだ歌もいい。


 表面的な意味は「夜には(灯火の)明かりの影になってしまう石の上を月が(照らして)助けるでしょう」となるが、明かり=明子、石の上=権大納言、月=かぐや姫と読み替えると、「明子の思いが届かない権大納言のことについてかぐや姫が助けるでしょう」となる。


 月=かぐや姫の連想については、明子は俺の生い立ちや名前の由来を知っているし、前にあげたアクセサリーが月と竹をモチーフにしているところからも分かると思う。

久しぶりの和歌でした。


「ぬばたまの」は黒をイメージさせる枕詞ですが、「ぬばたま」というのはヒオウギという草の黒い実のことだそうです。


ところで、ヒオウギという草、漢字で檜扇と書くのですが、つい秘奥義と書きたくなります。←病気

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