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弐百漆拾.呪いの双六盤

 双六と聞いて寛子の目が光った。


 寛子「よろしいのですか? 私、双六には多少自信がありますのよ」

 俺「それは楽しみですわ」


 俺はうふふと上品に笑ってみせると、寛子もほほほと上品に笑って返してきた。一触即発の緊張感が高まる!!


 雪「双六の用意ができております」


 タイミングよく雪が声を掛けてきた。


 双六の会場は俺の離れの方に作ってある。こんな暑いところでじっくり腰を据えて双六をするなんて耐えきれないから、空調の効いた涼しい所に移動するのだ。


 寛子は双六勝負に引き摺り込んだ時点で俺の使い魔になることが決定だから、俺の離れに入っても問題ないし。


 離れの部屋に移動すると、そこには立派な双六盤が置かれていた。見た目に美しいだけでなく、妖気すら漂っていそうな程に気品がある盤だった。


 それもそのはずだ。これは実は雨の持ち物なのだ。ああ見えても高位の神さまなので、この盤もそれなりの一品だ。ぼっちのくせに双六盤を持ってどう使うというのか。問い詰めてみたら泣きそうになっていたけど。


 しかし、持ち主はともかくこの盤自体は流石に神さまの持ち物だけあってかなり危険物だった。


 せっかく双六盤があるんだからと一度雨と対決したことがあるのだが、その対決はこの盤のせいで悲惨な結末を迎えて、それ以来この盤は第1種危険物として封印してあった程だ。


 実は、この盤で双六をすると、取り込まれてしまって止められなくなるのだ。


 いや、決して冗談ではなく、本当に危険なのだ。なぜか必要以上に興奮して入れ込んでしまって、ゲームを続けるためになら悪魔にでも魂を売ってしまいそうなほどに没頭してしまうのだ。食事を摂るのも睡眠を取るのも忘れてしまうので、人間界にあれば正に魂を吸い取る呪いの双六盤といったところだ。


 しかも、なぜか雨には全く呪いの効果がないので、何時間も経つと俺だけがどはまりで雨は白けまくっている状態になっていた。


 その状態で雨に何か意地の悪い賭け事でも持ちかけられたら何がどうなっていたのかとぞっとするのだが、残念ながら雨は驚異的に双六が弱かったので、全戦全勝を続けてどれだけ勝ってもやめようとしない俺に最後は本泣きに泣きながらサイコロを振っていた。


 その双六盤の封印を解いたのだ。


 封印を解いた以上、もはやこの勝負、止めることはできない。


 さらに恐ろしいことに、俺自身我を忘れて手加減さじ加減もできなくなるので、もっともえげつない方法で完封勝利を続けるだけのワンサイドゲームが延々と続くことになる。なにせ、俺のステータスは幸運も知性も振り切っているのだから。


 俺「地面に這いつくばらせてひいひい言わせてあげるわ」

 寛子「その言葉、そっくりそのままお返しいたしますわ」


 かくして、俺と寛子の尊厳を賭けた世紀の一戦が火蓋を切られたのだ。

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