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弐百陸拾陸.子安貝

 俺は俺の家の本殿の方で権大納言と対面していた。


 俺「この度は、中宮さまのご懐妊と権大納言昇進、おめでとうございます」

 権大納言「ありがとうございます。かぐや姫さまにそのように改まって言われると喜びもひとしおです」


 爺に頼んでいおいた権大納言との会談は2つ返事で了承をもらい、数日の内に権大納言の訪問になった。表向きの用件は中納言の懐妊のお祝いということだが、寛子の件を俺が心配していることはそれとなく伝えられている。


 俺「中宮さまについては最近体調が思わしくないということで心配しておりましたが、このような慶事であったと聞いて内心ほっとしております」

 権大納言「帝もたいそう心配なさっておりまして時折お慰め申し上げておりましたが、今度は無事出産できるか心配なさるようになって、本当に心配の種はつきません」


 帝が心配してたって? 帝は中宮の体調不良の真っ最中に俺の所に来て式神を押し倒してたくせに、何を言ってるんだか!


 とまあ、そんなことを考えていることはおくびにも出さずに、俺は雪に合図して用意してあったものを持ってきてもらった。


 俺「中宮さまの安産を祈願しまして、今日はこのようなものを用意しました」


 そう言って雪から受け取ったものを権大納言に差し出した。


 権大納言「これは?」

 俺「開けてみて下さい」


 被せられた布をつまんで中を見た権大納言の表情が驚きに染まった。ニヤリ( ̄ー ̄)


 権大納言「これは、もしかして!」

 俺「燕の子安貝です」


 これは権大納言が後ちょっとで手に入れそうなところで天照に天罰を落とされて手に入れ損なったあれを、あの後天照から貰ったものだ。貰った時はどうしようかと思ったが、こんなところで役に立つとは。


 俺「安産祈願のお守りとして効果が高いと聞き及んでいますので、中宮さまにお渡しくださればと」

 権大納言「かぐや姫さま、これをどこで?」

 俺「軒下に巣を掛けた燕が先日産み落としたものですわ」


 大嘘である。


 権大納言「参りました。かぐや姫さまにはとても敵いません。降参です」

 俺「ふふふ。では、勝者の褒美として一つお願いを聞いていただけますか?」

 権大納言「はて、何でございましょうか?」

 俺「先日、大納言さまが流罪となられましたけれど、大納言様には娘が1人いらっしゃいますの」


 権大納言は俺が話を切り出すと、やや緊張した面持ちになった。


 俺「その方に私の下で女房として働いてもらおうと思うのですが、いかがでしょう?」

 権大納言「……、中宮さまにお願いされたのですね」


 なんだ、知ってたのか。まあ、中宮が俺にだけ相談して実の兄に何も言わないなんてこともないだろうから、当然といえば当然だな。


 俺「それもありますが、私としても寛子さんはお友達ですから。大納言さまのしたことは許せませんが、無関係の寛子さんは助けてあげたいと思いまして」

 権大納言「……、わかりました。他ならぬかぐや姫さまの頼みです。そのことについて私の方からは何も言わないことにします。内裏の方への届けがあった際には適宜処理しておきましょう」

 俺「ありがとうございます」

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