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弐百陸拾参.仲人

 そういえば寛子は大納言の娘だった。他でもない中宮の頼みだし、俺自身としても助けてあげたい気持ちはあるけれど、ここで下手に手を出して俺の方に火の粉が飛んできても困るのでどうしたものか。


 雪「かぐや姫さま」


 俺が手紙を持ったまま考え込んでいたら、雪が心配そうに顔を覗き込んできた。


 俺「お爺さまに話を聞いてみるわ」


 爺なら毎日内裏に行っているし、今回の処分にも関与しただろうから、寛子の処遇について相談に乗ってくれるだろう。それに、寛子を俺の下に引き取るなら爺には話を通しておかないといけないし。


 爺「かぐや姫がそういうのなら、私は寛子さんを世話することに反対はしませんが、もしかすると権大納言が何か言ってくるかもしれませんね」

 俺「帝はどうなんですか?」

 爺「帝はこれ以上の罰は逆に祟りを引き起こすのじゃないかと及び腰になっていらっしゃいますから、多分大丈夫でしょう」


 問題は権大納言1人だけか。なら、直接交渉してみるか。


 と言っても、俺が権大納言を直接呼び出すわけには行かないから、ここは爺の協力を仰ごう。


 俺「お爺さま、権大納言とお会いしてお話をすることはできませんか?」

 爺「分かりました。近いうちにお会いできるよう、お願いしてみましょう」



 翌日には、今度は明子から手紙が届いた。また寛子の話だろうか?


 雪「いえ、そうではなく、竹仁さまのことで会って話したいことがあるとのことです」

 俺「竹仁に?」

 雪「はい。中宮さまのご懐妊に触発されて、関白さまが明子さまの入内の件を急ぎ始めたとのことで、そのことに関してお話がしたいそうです」


 そうだった。明子の入内の件は、蓬莱の玉の枝の件で関白を凹ませたことで一時トーンダウンしていたので忘れかけていたのだが、まだ解決していなかったのだ。


 それにしても、どう返事をしようか。今までは竹仁の正体がバレるのを怖れて直接接触しないようにしてきたけど、むしろ一度きちんと会ったほうがいいのかな……。って、あれ?


 俺「明子さんが会いたいのって、私?」

 雪「はい。手紙の宛先はかぐや姫さまになっています」


 むむ。竹仁に直接お願いしてもなかなか会えないから、今度はかぐや姫を間に挟もうという魂胆か。うーん、そこまでして会いたいのか。


 俺「分かった。いつでも好きなときに来てって返事しておいてくれる?」

 雪「かしこまりました」


 そもそも、明子はどうしてこんなに竹仁にこだわるのかな? 前に攫われてしまいたいとか言っていたけど、あれってどこまで本気だったんだろう?


 俺「ねえ、雪。誰かに攫われてしまいたいって思う時ってどんな時だと思う?」

 雪「攫われてしまいたい、ですか? そうですね。例えば、目を背けたいものがあって、自分ではそれができないというようなときでしょうか?」

 俺「目を背けたいものね」


 帝のことが目を背けたいほど嫌いなのかな。まあ、夜訪ねてきていきなり襲いかかってきたようなケダモノだけど(まだ俺は根に持ってるよ)、明子と帝の間にも何か過去に因縁とかあったのかなあ。

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