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弐百伍拾漆.緒

 おそらく、関白は自分が不在の間に政治が自分抜きで勝手に決まっていくことが心配で腹心の部下を使って影響力を維持していたのだろう。そしてその結果がこの書簡の束というわけだ。


 そんなに権力を手放したくないなら俺のことなんか諦めればよかったのに。


 前にもまして関白に対して醒めた気持ちになりつつ、決定的な証拠を探してさらに書類を読み進める。


 関白は相変わらず爺と上機嫌で歓談している。そういえば、爺が公卿になったのは関白が不在の間のことだったので、そのときの事を話しているようだ。


 墨(姫さま)

 俺(墨、どうした?)

 墨(市杵島姫さまたちの所に着きました)

 雨(ぜぃぜぃはぁはぁ)


 関白の書類を呼んでいると、イッチーたちのところへ向かっていた墨と雨から連絡があった。と言うか雨、そんなに息を切らして、お前はそれでも神さまなのか?


 墨(それで、市杵島姫さまたちが関白を見かけたところまで連れて行ってくれるそうですが、どうしますか?)

 俺(行ってきなさい)

 墨(雨さまはしばらく動けなさそうなのですが)

 俺(ついでだから海にでも捨てておきなさい)

 雨(ひどいっ)

 墨(分かりました)

 雨(ええっ!?)


 これで墨の方はよし。当たりを引けばいいんだけど。


 三羽烏(ご主人さま)

 俺(なんだ?)

 三羽烏(新しい書類を見つけました)

 俺(どれ?)


 そう言って、俺の視界に入ってきたのは数字がたくさん書かれた目録のようなものだった。よく見ると、金銀宝石の種類とその対価らしい内容が日付とともに書かれている。


 これはもしかして蓬莱の玉の枝を作った時の出納帳ではないかとピンときた。これを読めば関白の鼻っ柱をへし折る何かを見つけられるかもしれない。


 俺(すぐ見せて)


 俺は一度見たものは絶対に忘れずいつでもすぐに思い出せる超記憶力を持っている。例えば雪の入浴シーンなんかを今すぐ思い出して脳内に再現することだって可能だ。うふふ。


 それは置いておいて、とにかくそんな記憶力があるから、とにかくまずはこの出納帳の内容を全部記憶して後から中身をゆっくり検証しよう。


 くちばしをそんなに器用に動かしたことは初めての三羽烏だったが、俺が早く早くと焦らせるので時々書類を取り落としそうになりながらも超スピードで書類を全部めくっていった。


 書類を3分の2ほども読み飛ばしたところで、不意に違和感を感じた。


 あれ、なんかおかしい気がする。


 心に浮かんだ疑問を確かめるべく、脳内に複写した出納帳の中身をもう一度確認する。


 やっぱり、そうだ。職人への支払いが少なすぎる。

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