表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
256/362

弐百伍拾陸.ガサ入れ

 しまった。墓穴を掘ったか。一泊とかやる気満々じゃないか。これは、是が非でも墨と三羽烏に決定的な証拠を発見してもらわないと。


 俺(雨、もう着いたか)

 雨(無茶言わないでっ)

 俺(じゃあ、30分で着かないと根の国)

 雨(ひぃっ)


 雨を急がせた上で、俺は再び蓬莱の玉の枝を見る。


 これが本物でないなら精巧な作り物ということで、ということはどこかに作った人がいるってことだ。しかもこれだけの金銀宝石を集めてこれだけ立派な細工を施すことができるというのは、かなり腕のある職人がいたに違いない。


 その職人を見つけて自白させれば完璧。そうでなくても、関白と職人のつながりを示唆する証拠があれば……


 俺(三羽烏、そっちはどうだ?)

 三羽烏(字が読めません)


 あほー。


 俺(読めなくても読め!)

 三羽烏(無理ですっ)


 くぅ。こんなことなら三羽烏にも字を覚えさせておくんだった。


 俺(仕方ない。字はこっちで読むから、お前たちはめぼしい書類を探しておけ)

 三羽烏(イエッサーッ!)


 念話の最中にもおしとやかな表情だけは崩さないようにして、関白と爺が話しているのを聞いている振りをし続けていた。こういう時、女性は黙っていれば華みたいなところがあるので楽だ。


 それにしても、本当に日没までに間に合うのだろうか。こうなったら万が一の時のためにどさくさに紛れて関白を暗殺する方法も考えておこう。できるだけ証拠の残らない毒薬とかがいいな。


 三羽烏(ご主人さま)

 俺(どうした?)

 三羽烏(整理していない書類の束が見つかりました。最近の書類じゃないかと思います)

 俺(分かった。視界を繋ぐ)


 俺はすぐさま視界を三羽烏のものに連動させた。これをすると自分の視界が見えなくなるが、聴覚は残してあるので何かあったら気づくはずだ。


 三羽烏(ご主人さま)

 俺(なんだ?)

 三羽烏(くちばしで紙をめくるのは難しいです)

 俺(黙ってやれ)


 書類の大半は日常連絡の書簡だった。どうやら関白は不在の間も頻繁に京の腹心の部下と連絡をとっていたようだ。唐に渡っていたはずなのに?


 これは関白が蓬莱山に行っていないことの状況証拠ではあるが、決定打ではない。1年前の手紙と言われたら反証するのに時間がかかってしまう。もっと直接的な証拠はないか。


 書簡を読み進める内に、実は関白は唐に渡っていないどころか、少なくともこれまでに1回は京に帰ってきていたことがわかった。夜陰に紛れて屋敷に入り、夜明け前には離れるという形で他の人には知られないようにしたようだ。京の政治状況が気になって仕方がなかったのだろう。


 例の明子が言っていた幽霊はこれのことだったんだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この小説は、一定の条件の下、改変、再配布自由です。詳しくはこちらをお読みください。

作者のサイトをチェック
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ